コラム

2020/09/26

名城から見る技術継承法(群馬・YY)

名城から見る技術継承法


▼以前、福井県坂井市にある丸岡城を訪れた時のこと。不整形な自然石を積み上げた石垣に建つ天守閣は、一見こじんまりとしたたたずまいで質実剛健という印象を持った。国の重要文化財に指定されている丸岡城の特徴としては、屋根に葺かれた石瓦が挙げられる


▼福井市の足羽山(あすわやま)で産出する笏谷石(しゃくだにいし)を加工したもので、その数は約6000枚に上る。瓦は青緑色を帯び、雨に濡れると青の鮮やかさが増す。瓦は1枚の重さが最大60㎏程度あるため、建物にかかる総荷重は75tに及ぶ。豪雪地帯に立地する丸岡城で、積雪時の躯体への影響が懸念されるが、凍害に強い石の瓦が用いられた


▼丸岡城を築城した戦国武将、柴田勝豊。石材加工技術の保護育成を図るために石瓦としたという説もある。勝豊の伯父である柴田勝家も北ノ庄城(福井城)の屋根を笏谷石の石瓦で葺いている。江戸期は福井藩の重要輸出産品となり、各地に出荷された。現在も建築材から皿やコップなどの食器に至るまで、高い加工技術が息づいている


▼1948年6月に発生した福井地震で丸岡城も天守閣が倒壊する被害を受けた。その後、3年がかりで復興を成し遂げ、その偉容を今も丸岡の町に残す。石垣に石工の名前が彫り付けられた石を見ると、職人たちの技術の粋を集めて城が再建されたことを認識できる


▼災害発生時の復旧復興に建設業が果たす役割は大きい。毎年激甚化の一途をたどる災害に対応するためにも技術継承は重要課題だ。丸岡城主の勝豊のように技術を保護育成するには、発注者側にも業界育成の観点に立った、さらなる取り組みが求められる。(群馬・YY)


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