コラム

2020/10/08

遊びがもたらす効用(埼玉・MK)

遊びがもたらす効用


▼自治体の広報紙や一般的なパンフレットの印刷には、オフセット印刷という技術が用いられる場合が多い。新聞を刷る工場では輪転機も多く稼働しているが、主流となっているのはオフセット。小ロットの部数や小規模な工場の場合にはオンデマンド印刷でも対応可能。いずれの技術も、人の手による機械の操作が印刷物の品質に関わる


▼印刷物の完成までには製本加工の工程も経なければならない。A4やA3の紙に初めから印刷することは少なく、まずはその何倍もの大きさの紙に印刷した上で裁断や折る過程が存在する。紙の質や厚さに応じて、職人たちが裁断機や折り機、中綴じ機などを設定しなければならない。こちらも人の手一つで品質に雲泥の差が付く


▼ここでようやく本コラムの趣旨に触れられる。印刷や製本加工で最も重要な点。それは、常に「遊び」を持たせるということだ。印刷機を本稼働させるに当たり、色の乗り加減などを90%程度まで調整する。そこから機械を回し始めてようやく100%の印刷が完成する。ここに現れる10%の差が「遊び」である


▼製本にも同じことが言える。例えば折り加工。紙の厚さ・重さ、サイズに加えて室内の湿度や気温まで考慮して機械の設定をしなければいけない。試し折りをしながら折り幅を決め、機械の本稼働につなげる。ここでも人の手が加わる「遊び」を持たせた設定が必要


▼思えば普段の取材でも、聞きたいことを100%で聞いても、教えていただけないことが多々ある。無駄話のような「遊び」こそが緊張を解き、本題に迫る取材が可能となるのだろう。(埼玉・MK)

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