コラム

2020/10/16

言葉にできない技術(群馬・YT)

言葉にできない技術


▼新型コロナウイルスの影響で外出する機会が減った影響もあり、週末に料理をするようになった。学生時代にしていた簡単なものを手短に作るいわゆる「男の料理」ではなく、少し手間のかかるものを作るようにしている。作る料理を決めて食材を集め、調理し食べて、片付ける。簡単だが難しく、楽しいひとときだ


▼キッチンに立って実感したのは、レシピや解説書に載っていないノウハウが多くあることだ。玉ネギのみじん切り一つとっても、効率のいい切り方は書いてあるが最初はなかなかスムーズにできない。今は多少改善しているものの、最初のころと道具や方法が変わったわけではなく、経験やアドバイスにより向上したということだろう


▼経験やノウハウというものを効率的に得るには、どうしても指導してくれる人が必要となる。先ほどの玉ネギのみじん切りも、苦労している姿を見た妻がくれた簡単なアドバイス一つで大幅に効率が改善した


▼1300年代の随筆、徒然草にある「すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり」の一節のとおり、先輩や案内してくれることの重要性が分かる。人手不足が長年の課題となっている建設業。今ある現場に従事する人がいないという直接的な影響だけでなく、技術やノウハウを伝える先達がいなくなり、断絶を招くという悪影響がある


▼現場によってつくるものはもちろん気候や地形も変化し、まったく同じものをつくることはない。素人の料理とは比べものにならないほど、言葉にならない技術やノウハウが詰まっている。先達から技術を受け継ぎ、次代につなげなくてはならない。(群馬・YT)


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