コラム

2020/12/17

ぼけましてもよろしく(埼玉・SW)

ぼけましてもよろしく


▼新型コロナウイルス感染症の影響で、自宅にいる時間が増えた。テレビを見る機会が以前より増え、日曜日の昼下がりに、ドキュメンタリー番組を見た。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』のその後だ


▼映画は、認知症の母と老老介護する父の暮らしを、映像作家の信友直子氏が映した作品。撮影当時、90代の両親は広島県で暮らしていた。母は認知症になったが、それが2人の絆を強くさせたという。映画は「まるで自分の親を見ているようだ」と共感を呼び、全国で18万人以上を動員するヒットとなった


▼映画公開中の18年10月、母が脳梗塞で倒れた。一命は取り留めたものの左半身に麻痺(まひ)が残った。母は「家へ帰りたい」とリハビリを始め、父は毎日、面会に行って励ました。父は「いつ帰ってきてもいいように」と98歳で筋トレを始めた


▼その後、母は歩けるまでに回復したが、新たな脳梗塞が判明し全身麻痺になり、以降は寝たきり生活となってしまった。20年3月、コロナ禍で仕事がなくなった信友氏は実家に帰った。母の病状は少しずつ悪くなっていき、紫陽花(あじさい)が好きだった母を、自宅に咲いた紫陽花も見送るかのように、6月に息を引き取った


▼60年以上連れ添った父と母が人生終盤の日々をどのように生き、別れ、残されることになった父がどう立ち上がっていくのか、いろいろと考えさせられた。父は11月に100歳を迎え、市から表彰を受けた。その後「母と一緒に食べたかった」ハンバーグを娘と一緒に食べていた。数年後、残された父のその後を見てみたい。(埼玉・SW)


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