コラム

2021/01/26

守り事の向こうに満足(長野・TT)

守り事の向こうに満足


▼昨年末に引っ越しをした。これまでの住まいから遠方に移り住むため家財の運び出しから、新居への運び込みまで3日がかりだった。業者の手違いで実際に荷物を積んだトラックが到着したのは午後8時を回っていた。予定時刻からは随分遅れて運搬作業が始まった。外は真っ暗、外気も冷え込み、とにかく早く荷物を部屋に運び込んでほしい、その一心だった


▼業者からすれば、建物や家財道具に傷を付けることなく作業を終えること。これが何より優先されるのだろう。運び込まれた家財道具の些細(ささい)な傷の確認、これにはかなりの時間を要し、仕方ないと思いながらもこれまでの引っ越し準備の疲弊が重なり、イライラが募る


▼そんな作業中、若い作業員が「もしよろしければカーテンを取り付けましょうか?」「照明を取り付けましょうか?」と運搬作業とは関係ないところに気遣いの言葉を掛けてくれた。この言葉に気持ちが和らぎ、イライラもすっと消えた


▼確かに作業中に家財や建物に傷をつけたり破損させたりする行為は、クレームのナンバーワンになりそうなことも予想はできる。おそらくマニュアルにも細かく記載されているのだろう。しかし、そのマニュアルは最低限の守り事であって、顧客を満足させるものではないことに気付いた


▼日々の記者業務でも団体名、氏名は絶対に間違えていけないから始まり、統一表記などマニュアルには多くの項目がある。それに従っていれば最低限の記事は書けるが、購読者が満足する記事に仕上がっているかはまた別の問題。取材力、文章力、そして人間力を向上させて、喜ばれる紙面を提供していきたい。(長野・TT)


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