コラム

2021/02/03

本当のリスクは(埼玉・YF)

本当のリスクは


▼2020年は「将来は予測がつかない」ということを嫌というほど思い知らされた年だった。個人的に最も鮮烈に記憶しているのが、株式を中心とした金融相場だ


▼2~3月にかけて世界的に株価が暴落した「コロナショック」で青ざめた人は多いのではないか。すわリーマン・ショックの再来かと肝を冷やしたが、その後は見事なV字回復を果たした。それどころか日経平均は好調、ナスダックは過去最高値に達するなど、市場の熱狂は止まらない


▼個人投資の新規参入が増えている。とりわけ、若者の証券口座開設が急増しているという。相場が好況なことや、手軽に取引できるスマートフォンアプリの普及も後押ししている。ここまでくると聞こえてくるのが「80年代のころは」「ドットコムバブルでは」といった戒めの声だ


▼エドワード・チャンセラーという歴史学者が書いた大著「バブルの歴史」ではこうした事例を生々しく解説している。オランダのチューリップ、南海泡沫(ほうまつ)事件、鉄道バブル--。冷めない相場はないと、過去の歴史で分かっているはずなのに同じことを繰り返してしまう


▼そんなリスクを知っていながら、息せき切って証券口座を開く若者は、どのような思考でいるのだろうか。平成生まれとして思う理由は、確固たる将来への不安だ。今回のパンデミックで、自分の業界が将来安泰だという幻想は一気に消えた。人生100年時代に突入し、金融庁が提示した「老後資金2000万円」問題も記憶に新しいところだ。未来は誰にも予測できないが、何もしないことが、最も大きなリスクになり得るのだ。(埼玉・YF)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら