コラム

2021/02/06

価格ありきでは成り立たぬ(埼玉・SW)

価格ありきでは成り立たぬ


▼先日、読者から問い合わせを受けた。埼玉県内のある自治体が公告した一般競争入札についてだ。福祉事務所の解体と解体跡地への駐車場整備を一括としており、参加可能な業種は「土木」だった。「件名の先にある方が主工事ではないか」との指摘だった


▼発注方式を一括とするか、分離とするかは自治体によって判断が異なる。一括の方が総額は安くなりやすい傾向にあり、一方では分離の方が複数社に仕事が回ることになる。血税を使用している観点からも「できるだけ安くて品質の高い工事」が求められ、どちらが適当なのかは一概に判断できない


▼とはいえ、物にはなんでも適正価格がある。現在では100円ショップに100円超の商品が置いてあるが、例えば100円のバスタオルの品質はあまり期待できないだろう。それが500円ならば、それなりに期待できる


▼工事でも同様のことが言えよう。先の工事の場合、事務所解体の方が要する金額は高いはずだ。解体よりも土木の業者の方が多く、参加者が多くなることで「少しでも費用を抑えよう」という発注者の思いが見え隠れする。結果として、それが「たたき合いになってしまう」という危惧につながる


▼読者は「仕事はボランティアではない」と憤っていた。民間企業であるからには、利益追求は自然の道理だ。価格だけに気を取られると、品質確保との両立が難しい。「安かろう悪かろう」では効率的とは言えない。新聞社の力を頼ってくれたことを励みに、発注者には「安全と安心は価格ありきでは成り立たない」ことをこれからも伝えていきたい。(埼玉・SW)

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