コラム

2021/02/23

名建築存続の行方は(群馬・KO)

名建築存続の行方は


▼米子市公会堂、維持か閉鎖か。2006年4月の地方紙に掲載された見出しだ。建築家・村野藤吾氏の設計により、1958年に鳥取県米子市に開館した同施設。老朽化により閉鎖する案が浮上したのち、市民からは維持を求める声が多数を占め、最終的に維持の方針が決定した。改修工事は当時の建築思想を尊重し、天井構造や外装タイルなどの細かい部分まで忠実に再現。今もなお、市の文化の殿堂として多くの人に親しまれている


▼群馬県内でも県民の文化ホールとして位置付けられている群馬県民会館が、同じく老朽化により、維持か閉鎖かの決断を迫られている最中だ。県は大規模改修にかかる費用や維持費を考慮し、閉鎖の方針を示しているが、維持を願う文化団体などで構成された市民団体は建物の文化的価値などを理由に維持を訴えている


▼県民会館の魅力を改めて知ることを目的とした勉強会に取材で同行したことがある。建築士の方々から天井の高いロビーや大ホールのホワイエ、12角形の特徴的な柱などさまざまな魅力を紹介してもらった。見学が終わると、会館を取り壊さないでほしいと思う気持ちが湧いた


▼代替施設はというと、会館と同規模以上の施設がすでに整備されており、県は県民の利便性には不便が生じないとしている。公共施設に関する経費を抑えることは当然だが、近代建築の秀作を閉鎖するとなれば、県民のみならず国民にとっても不利益になる


▼昭和の名建築が建て替え時期を迎える中、維持する場合は多くの課題を解決しなくてはならない。名建築を後世に残すという意味も含めた慎重な議論が求められる。(群馬・KO)


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