コラム

2021/04/21

ようこそ個性の時代(埼玉・YF)

ようこそ個性の時代


▼ペットの趣味が高じて猫との共生住宅を手掛ける一級建築士と話をする機会があった。「ニッチな分野で最初はお金にならなかった」というが「自分が楽しいから」「猫のためになれば」と続けていき、今では業界の第一人者になっている


▼彼は「動物の知識」「建築士」といった趣の違う、複数の分野を突き詰めていけば、おのずと食べていけるようになると語る。これは近年のビジネス書でも盛んに唱えられている言説で「100人に1人のスキルが2つあれば、かけあわせることで1万分の1の人材になれる」という表現でしばしば形容される。先鋭化された個性がときに、余人をもって代えがたいライフワークになるのだ


▼個性といえば話は変わるが、元国民的アイドルグループ・SMAPの「世界に一つだけの花」が発表されて、もうじき20年がたとうとしている。「ナンバーワンにならなくてもいい」と輝ける個性を高らかに歌い上げた流行歌は押しも押されもせぬ名作であるとともに、しばしば批判の対象になってきた


▼曰く(いわく)横並び主義的で、おててをつないで一緒にゴールインといったように「競争力を阻害している」というもの。思えば曲が発表された2000年代は「バトル・ロワイアル」「カイジ」など「勝負に勝たなければならない」といった、対極にある殺伐としたコンテンツも同時にはやっていたように思う


▼建築士の同氏を思い起こすと、20年代に突入して、このような対立軸に一応の決着がついたように感じられる。インターネットの普及も相まって、個性はより顕在化した。楽しい時代になってきたように思う。(埼玉・YF)


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