コラム

2021/04/23

身近なものの変化を感じて(長野・RM)

身近なものの変化を感じて


▼日本の屋根とも呼ばれる北アルプスには、穂高岳や槍ヶ岳など3000m級の山々がそびえる。その中の常念岳(じょうねんだけ)に「常念坊」という僧侶を思わせる雪形が、毎年春の雪解けの時期に浮かび上がる。山の東面の岩肌がとっくりを持つけさ姿の坊さんに見え、人々の目を楽しませる


▼常念坊とは安曇野の民話で、坊さんが小さいとっくりを持って酒を買いに来た。ところがその小さいとっくりには欲しいだけの酒がいくらでも入るという。坊さんは酒を買うと常念岳の方の闇の中に消えていく。誰もが常念岳の主の常念坊だと言った、という話である


▼この常念坊が見えるようになると、安曇野の地では古くから田植えの時期を告げるものと周知されている。農家の人たちはもちろん、小さい子からお年寄りまで、多くの人が知っている地元では有名な「お知らせ」なのである


▼そして常念坊と入れ替わりのように現れるのが「万能鍬」である。こちらは農耕の始まりを告げる「お知らせ」として常念坊と同様に多くが知っている有名な形である。常念岳は春が訪れると山頂の雪が解け、起伏によりさまざまな雪形を形成する。その雪形の見え具合によって昔の人は農作業の判断をしていたそうだ


▼今ではカレンダーを見て、天気予報と相談しながら作業予定を立てることが多いだろう。しかし、少し変わった視点で生活を送るとまた面白い発見があるかもしれない。何月何日に種をまくという決め方よりも、気候の変化などに合わせてまくのもいいかもしれない。皆さんも身近な山の雪形や草木の変化などで行事のタイミングを計ってみてはいかがだろうか。(長野・RM)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら