コラム

2021/05/28

浮かぶも沈むも水次第(埼玉・MK)

浮かぶも沈むも水次第


▼今年も梅雨の季節がやってきた。肌に帯びる湿気が否応なく夏の到来を感じさせる。夏とは、すなわち台風の季節でもある。近年、大雨がもたらす河川の氾濫が多くの人の平安を脅かしている。自然災害との戦いは、ほとんど「水」との戦いと言える


▼河川整備などハード面での備えを固める一方、ソフト面の充実も欠かせない。例えば今月20日には「避難指示」と「避難勧告」が「避難指示」に一本化された。局所的な大雨を降らせる線状降水帯に関する情報発信も、より一層活発になる。有事の際は周りに流されない判断力や行動力が求められる


▼新型コロナウイルスにおびえる暮らしも、2回目の夏を迎える。感染状況に右往左往するわが国の代表者たちは、さながら荒れ狂う流れになすすべのない船。あの手この手と繰り出す苦肉の策はどれも後手後手。いまひとつのかじ取りに、振り回されるのはいつも市民


▼悪いのは船長か、あるいは命令に従うことしかできない船乗りたちか。意見を言えない組織が「たちどころに天下万民の大きな弊害を招く」と指摘したのは中国に伝わる言行録「貞観政要(じょうがんせいよう)」の一節。部下が上司を恐れて意見を言わず、それどころか明らかな間違いを訂正もできない。そんな状況にある君主と人民を当時の皇帝・太宗は「舟と水」に例えた


▼水は船を浮かべ運ぶが、同時に船を沈めるのも水。これまた、中国の思想書「荀子(じゅんし)」からの引用であるが、示唆するところはあまりに大きい。漫然と船を運ぶ水に甘んじるのか、はたまた船を沈める水となるか。雨の季節を目前に、一人一人が備えを整えなければならない。(埼玉・MK)


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