コラム

2021/06/25

やりがいを伝えるために(群馬・YT)

やりがいを伝えるために


▼安土城を建てたのは誰か。そう聞かれて多くの人は織田信長と答えるだろう。少し意地悪な人であれば大工さん。意地悪な上に歴史に詳しい人であれば、岡部又右衛門と言うかもしれない。熱田神宮の宮大工の棟梁として安土城の天守閣の建設を指揮。今でいえば施工者といったところだろうか


▼大阪城であれば豊臣秀吉、江戸城は徳川家康と、建てた人として歴史に名を残しているのは、今でいえば施主に当たる立場。姫路城や松本城など国宝になっている有名な城でも、施主はもちろん岡部又右衛門のような施工者まで覚えている人は少ないだろう。城によっては施工者が記録に残されていない場合も多い


▼時を現代に戻すと、城に当たるような大規模な建築物であれば施主も施工者も特定することはたやすい。さらに調べれば施主の思いや施工者の努力した話なども出てくるかもしれない。一方で、例えば自身が出社してから会社に到着するまでに通った道路や橋梁など地域に密着した、小さな工事の施工者を知っている人はどれだけいるだろうか


▼建設産業の魅力として多くの人が挙げるのは自分が手掛けた道路、橋梁、河川の護岸などが長い間そこに残ること。どんなに小さな工事でも、そこにはさまざまな人の誇りとプライドが込められている


▼群馬県は、こうした建設業のやりがいを広く伝えるため、工事銘板に工事情報や施工現場の動画などを見ることができるようにQRコードの掲載を試行している。情報が簡単に手に入るようになれば、それだけ建設産業のやりがいが伝わりやすくなる。その体制を整えることも行政の重要な仕事だ。(群馬・YT)


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