コラム

2021/07/16

聞き慣れた言葉でお願い(埼玉・IK)

聞き慣れた言葉でお願い


▼「シンカ(進化・深化)とキョウソウ(共創)を」。力強くこう唱えるのが、5月のさいたま市長選で4回目の当選を果たした清水勇人市長。政治基盤を新たに固めた市長は、国内が直面する二つの危機を「新型コロナウイルス感染症」「人口減少」と定義し、それらを乗り越える施政方針を掲げた


▼面白いと感じたのは「キョウソウ」という言葉遣い。凡庸な発想なら「連携」「協働」などと簡単に表現してしまうところを、意義強調のため、造語に置き替える。一般人が日常生活でこんなまねをしたら、周囲に疎まれもするだろうが、政治家にはそれが実行できる。むしろ、できなければ駄目であろう


▼人は言葉に依存する生き物だ、とつくづく思う。具体的な容姿を褒められ気持ちが高ぶったり、または、原因不明の体調不良に悩んでいたところ、明確な病名を教えられることで、ほっとしたりするように、言葉の有無が、人の心理には大きく関わっている。言葉をどう巧みに駆使できるかが、政治家の手腕であるのは間違いない


▼文化の語源を「文徳教化」とみる説がある。文化の成り立ちには、言葉による教えや、その際の言葉遣いが影響してきたと考えるのは、的外れではないはずだ。ここ1年以上、「三密」「PCR」「~株」など、新奇な言葉に振り回された日々を思えば、妙に納得してしまう


▼さて、清水市長の「シンカ・キョウソウ」の響き自体に派手さはないが、それだけに堅実さがあり、個人的には好きなセンス。ただでさえ、聞き慣れぬワードが舞う昨今。造語であっても、せめて、落ち着いた言葉遣いがほしくて仕方ない。(埼玉・IK)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら