コラム

2021/08/06

歴史と安全の間で(埼玉・YH)

歴史と安全の間で


▼1936年にモータースポーツ用の常設サーキットとして神奈川県川崎市に誕生した多摩川スピードウェイの遺構が取り壊しの危機にあるという。当時の状況を知ることができるのは、コンクリート製の観客席のみ。開設80周年を迎えた2016年には記念プレートも設置している


▼取り壊しについて、任意団体「多摩川スピードウェイの会」によると、多摩川河川敷の堤防強化工事の一環で観客席を取り壊すという。着工は今年10月の予定。これは7月2日に国土交通省から通達があったという。同会は工事に対しての反対はしていないものの、計画見直しの申し入れを実施。「3カ月前の通達で、検討の余地もない。文化保護的な観点からも許容されるものではない」などといった旨の声明を出した


▼同レース場は開設以降、4度の大会を開催。参加者には海外メーカーも参加したほか、後に本田技研工業を創設する本田宗一郎氏も参加している。このサーキットがなければ、国際的なレース場の開設やF1の開催どころか日本におけるモータースポーツの歴史はさらに遅れていただろう


▼とはいえ、19年の東日本台風では自分も身の危険を感じた。浸水被害などが心配で、テレビやインターネットから流れてくる台風の状況を細かく見ていたのは、あのときが初めてだったかもしれない。避難の準備までしたほどだ。各地で被害が起き、台風の脅威を改めて思い知らされた


▼モータースポーツファンとしては歴史を残してほしいと思う。しかし、人命を守る観点からも安心・安全な対策をとる必要もあると感じる。果たして妥協点はどこにあるのか。(埼玉・YH)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら