コラム

2021/09/30

未来の研究者の手助けに(長野・TT)

未来の研究者の手助けに


▼日本人初のノーベル賞受賞者で理論物理学者・故湯川秀樹博士が、晩年まで24年間を過ごした京都市左京区下鴨泉川町の「湯川秀樹旧邸宅」を、長谷工コーポレーション(東京都港区)が購入し、これを8月末に京都大学に寄付した


▼邸宅は1933年に建てられた、築90年の日本家屋。木と土蔵造り2階建て、敷地面積は約750㎡。当時、湯川博士は庭を眺めながら思索にふけり、世界各国から来客を迎え熱い議論を交わした場と言われる


▼譲り受けた京都大学では、湯川博士の遺志を受け継ぐ、国内外から訪れる来賓客の接客や滞在、研究者たちの交流、ゆかりの品を展示する場として活用する方向で検討している。施設の設計は、世界的な建築家の安藤忠雄氏が担当し、今後着手する工事は長谷工コーポレーションが無償で行うようだ


▼情報に頼り過ぎる生活に慣れてしまったのか、知らず知らず全てのものにコストパフォーマンスを求めがちになっている現代。なぜか「お得感」に踊らされている。コストパフォーマンスを重視する思考では、最初のエンジンを点火するコストパフォーマンスの悪さに気付いてしまうと、何もできなくなってしまう。目先の損得ばかりが気になり、これが本当に幸せなのかと自問自答する


▼そんな中、「コスパ」を考えない最強のタッグが組まれた。最近はコロナ禍で暗いニュースが多いが、これは建設業界が若き研究者の手助けをしていることを想像させるような明るい話題だ。今後この旧湯川邸が人材交流や情報発信の場となることを期待するとともに、それを側面から支援した建設業界を誇りに思う。(長野・TT)


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