コラム

2021/10/01

上から目線と下から目線(東京・KK)

上から目線と下から目線


▼上越新幹線で24年間にわたり活躍したオール2階建ての新幹線・Maxが、今日ラストランを迎える。鉄道ファンではないのだが、旅行や帰省で数え切れないほど乗車したこともあり、初めて鉄道車両に対し惜別の情が湧いた。個人的に最後の乗車となった9月下旬、別れを惜しむ人々がホームで写真や動画を撮影する姿が印象的だった


▼2階建ての新幹線は、通常よりも多くの人を運ぶことができる一方、車両が重くなるためスピードが出せない。のんびりとした旅行にはうってつけだが、通勤利用では速達性に問題が生じてしまう。また、近年進展するバリアフリー化、デジタル化への対応の難しさも「引退」に至った要因のようだ


▼初めて新幹線の2階席に座った時、車窓から見えた風景を昨日のことのように覚えている。これまでよりも少し高いだけなのに、目に飛び込んでくる景色が全く異なる。特に東京―新潟間は四季の違いがはっきりしているため、同じ車両でも季節によっては違う乗り物に乗っているようだった


▼魅力は2階席だけではない。1階席は目線がホームとほぼ同じになり、普段は見ることのないグランドレベルからホームを上目遣いで望む。ありふれた光景も違った角度で見ることで、目に入る情報が変わってくるのは面白い


▼考えてみれば、少し高い位置からの「上から目線」と、少し低い位置からの「下から目線」が共存する空間は珍しい。状況や気分に応じて使い分けることができる利便性の高さは貴重だ。今後は皆同じ目線の車両に乗ることになるが、少し目線を変えれば見える景色が違うことを忘れずにいたい。(東京・KK)


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