コラム

2021/10/23

デジタル化に愛をうたう(茨城・YM)

デジタル化に愛をうたう


▼創立70周年を迎えた日本工業経済新聞社は10月1日付で「提言特集号」と題して、建設業が抱える課題へさまざまな提言を掲載した。通常業務では関われない人や場所を取材できたことが、何よりも貴重な経験となった


▼特集号では天守閣復旧が完了した熊本城を取材。大阪府と熊本県を訪れて関係者に話を聞いた。自然災害から歴史的建造物を守るためには左官など伝統技術を持つ職人の確保・育成、計画的工事発注、ICTの積極導入など取り組むべきことは多い


▼中でも、復旧に当たりBIMの存在が大きい。少ない資料からの復元には限界があるため、オルソ図などを用いて設計図が何とか完成。担当者が「デジタル化が進んでも職人同士の人間関係が成り立たなかったら、完成しなかった」と言うセリフが妙に心に刺さった


▼担当者のセリフで、東武鉄道の広告コピーを思い出した。広告は『AIには、まだ任せられない。愛が動かすんだ、SLってやつは。』とうたい『SLが動いている。人の五感が動いている。』と付け加えてあった。さらに、熊本へ向かうために利用した羽田空港国内線ロビーで、一つの広告が目に留まる。企業名は失念したがコピーは「AIにも愛を」とうたっていた


▼どちらも駄じゃれでは終わらない熱い感情を感じた。映画「ターミネーター」の世界が実現しない限りBIMやAIは、人が引き続き操作していくだろう。デジタル化が進む建設業が、歴史的建造物を自然災害から保護し保存していくためには、人間関係や愛といったアナログな要素が案外鍵を握っているのかもしれない。(茨城・YM)


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