前田全建会長
前田 靖治 全建会長に訊く
品確法が適切に運用されることを期待
ネットワークを活かす
建設業の災害復旧支援
発注者支援機関提案へ
(社)全国建設業協会(全建)には北は北海道から南は沖縄県まで47都道府県の約3万社の建設企
業が会員として加盟している。それぞれの地域で公共工事などを通して磨かれた技術力と経営力は地
震や台風などの災害時に大きな力を発揮する。都道府県などの自治体と災害協定を結び、復旧活動の
支援を迅速に行っている。建設業の良さはネットワーク力だ。今でこそ「ネットワーク」というと、
パソコンやインターネットの代名詞のようになっているが、建設業のネットワークは歴史的な伝統を
持っている。
全国の建設業団体でも最大規模を持つ全建では現在、入札・契約制度検討会を設置して、「入札・
契約制度のあるべき姿」について検討を進めてきた。その中で今年4月1日に施行された「公共工事
の品質確保の促進に関する法律」(品確法)についても、その運用に向けての具体的提案を行う予定
である。
また、全建では「地域の建設業の新分野進出」のテーマにも取り組んでいる。今回、前田靖治(社
)全国建設業協会会長に、品確法、入札・契約制度、災害復旧支援活動、新分野進出問題などの重要
テーマについてうかがった。
-「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)が4月1日から施行された。この法律をど
う見るか。
前田会長 品確法は公共工事の入札で従来の価格だけを偏重した競争から、価格だけでなく入札参
加者の技術力を含めて総合的に評価するよう発注者に義務づけており、入札・契約制度の大きな改革
である。これまで建設業界が求めてきた「ダンピング受注の防止」、「不良・不適格業者の排除」、
「技術と経営に優れた企業が伸びる競争」を実現することに効果があるものと非常に期待している。
全国建設業協会では、2年前に入札・契約制度検討会を設置し、公共工事に関する入札・契約制度
のあるべき姿について検討を進めてきた。去る5月9日には最終報告としてまとめている品確法の実
運用に向けての具体的な提案「実効性のある競争が行える入札システム」、「発注者支援機関の仕組
み」等について全建としての考えを公表した。最終報告書はこの2、3か月のうちに発刊したい。
全建には約3万社が会員として加盟しているが、それぞれの地域で公共工事などを通して技術力や
経営力を磨いてきている。品確法の施行に伴い、全建会員の高い技術力・経営力などが公平・公正に
評価されることにより、良質な社会資本整備の推進を通じ、豊かな国民生活の実現、安全の確保、環
境の保全などに貢献できるものと考えている。
-今後の入札・契約制度の課題について。
前田会長 品確法が実際にどのように運用されるのかが、現在の最重要課題である。一部の地方自
治体などにおいては品確法の具体像が明確でないことや情報不足であることなどから実運用に向けて
懸念の声もあるとも聞いている。品確法の適切な運用には発注者の品確法に対する理解、積極的な取
り組みが不可欠である。
今後、国土交通省を中心として今夏までに基本方針が策定される予定である。その中で全建の考え
方が取り入れていただけるよう、新たにワーキンググループを設置して検討を進めて提案していく。
市町村を含む全ての公共工事の発注機関において、品確法が円滑かつ適切に運用され所期の目的が達
成されることを期待している。
-昨年は福井豪雨、新潟県中越地震、海外ではスマトラ沖地震と災害の多い年だったが、建設業の災
害復旧支援活動について。
前田会長 全国建設業協会と傘下の各都道府県建設業協会では地方自治体と災害協定を結び、地震
や台風などの災害復旧の支援をしている。新潟県中越地震の時は新潟県建設業協会に現地対策本部、
全建に災害協力本部をすぐに設置し、復旧支援のための活動を迅速に行った。私も福井豪雨と新潟県
中越地震の被災地に行って災害復旧の状況を見てきたが、地域の建設業の支援がなかったら、復旧に
大きな支障をきたしただろう。地域で建設業を営む人々はその土地の自然や地形を熟知しており、災
害復旧の際に大きな力となる。こうした建設業の地域貢献を発注機関はもちろん国民の方にも知って
もらいたい。
-農業、環境、介護など地方の建設業の企業連携・新分野進出が活発化しているが、この動きについ
て。
前田会長 地方の中小・中堅建設業の現在の受注高はピーク時と比較して5割程度に落ち込んでい
る。低いところでは3割程度にしかなっていないところもある。地方経済を活性化し、雇用を確保す
る上でも地方の建設業の企業連携・新分野進出は大変重要になっている。建設業の技術力・ノウハウ
を有効活用することは地方経済の発展ために必要不可欠になってくるだろう。
現在の世界経済を見てもそうだが、ネットワーク化が目覚ましく進んでいる。日本においても東京
や大阪など大都市が発展するためには地方の支えが必要である。東京だけ活性化しても日本の持続的
な成長はない。その中で建設業の果たす役割は大きい。建設本業はもちろん、保有する多くの技術で
新分野にも進出し地方経済の活性化に貢献しなければならない。現在、全建では地方の商工会議所と
協力して「地方経済をどうやって活性化するか。建設業に何ができるか」を検討している。
PROFILE 前田 靖治(まえだ やすじ)全国建設業協会会長
昭和19年7月7日生まれ、学習院大学政経学部経済学科卒業、平成6年前田建設工業?代表取締役社
長、(現在)、団体等要職、全国建設業協会会長