国交省佐藤事務次官
整備局同士も競争
総合評価6、7割目指す
佐藤信秋事務次官インタビュー
国土交通省
国土交通省の佐藤信秋事務次官は日本工業経済新聞社のインタビューに応じた。その中で、総合評
価方式の拡大について18年度、整備局同士で競い合って6、7割を目指していくという考えを述べた
。直轄工事における全面的な展開と市町村対応には、有識者の人数不足という観点から、第三者委員
会がポイントになるとの認識を示している。また今後の地方・中小業者育成については、専門工事業
への特化も考え方の一つでは、と見解を述べた。
佐藤事務次官との一問一答は次のとおり。
―公共工事品確法が施行され、ガイドラインが策定された。今後の、直轄工事発注のあり方は
佐藤事務次官 これから一番大きく舵を取っていくのは、総合評価方式を徹底的に浸透させること。
直轄工事がフロントランナーになる。談合防止、不良不適格業者の排除、粗雑工事をなくすことを考
えていくと、価格だけでは限界がある。世界的に見ても、価格だけで競争している国はない。自分の
家を建てる時に、安ければ良い、という人は誰もいないはず。価格プラス品質で評価するということ
は、ごく自然な流れだろうと思う。
―総合評価方式は、18年度金額ベース5割超で行うとされているが、簡易型を含めた場合はすべての
工事が対象となるのか
佐藤事務次官 今すぐには、足腰がそこまでついていけない部分がある。ガイドラインは策定したが
、習熟期間が必要。(国土交通省は)1万件以上の工事を発注している。今すぐに、すべてを簡易型
も含め総合評価というところまではいかない。速やかに、一定額以上の工事は基本的に総合評価方式
としたいが、(今の段階で)できない約束をするわけにはいかない。来年は5割強としているが、限
りなく努力する。徹底的にやって、7、8割ということも期待している。ただ、手続き、執行が追い
つけずに、発注そのものが遅れることがあってはならない。
―認識している課題は
佐藤事務次官 総合評価方式では基本的に、委員会などで第三者の意見を伺うことになっている。そ
ういう部分でどこまで追いつけるか。専門家の方が、それほど大人数いるわけではない。
―市町村支援についての考え方は
佐藤事務次官 大きく分けて二つある。一つは、それぞれの市町村の中で、そもそも総合評価方式を
適正に発注する手順を取れるための技術者がどれだけいるのか。技術者が全くいないという市町村も
沢山ある。その体制をどう支援するのかということ。この部分については、県の技術センターなどで
当面カバーしてもらいたい。すでに芽が出てきている県もある。
―もう一つは
佐藤事務次官 地方自治法で、総合評価方式を行う時は有識者2人以上のの意見を聞くことになって
いる。それだけの有識者がどこにどれだけいるのか。(国土交通省が)フロントランナーになり第三
者委員会を設け、習熟した先生方を輩出してもらう。その先生方に、市町村のアドバイザーとしても
機能していただく。このやり方が、一番の近道だと思っている。
―各地方整備局が、管内自治体をまとめる核になるのか
佐藤事務次官 核とまで言うのは、少しおこがましい。ただ、国土交通省がフロントランナーとして
、まず頑張らなければならない。総合評価方式を6割、7割にしてくよう、整備局同士、競争しても
らう。その中で周辺市町村に対する協力が、段々とできるようになると思う。まずは自分たちがやる
。今年来年あたりは、そういうことだろう。
―一般競争入札を大幅に拡大したが、不良不適格業者が参入し易くなるという懸念は
佐藤事務次官 総合評価方式を同時併用することにより、不良不適格業者を排除する。ペナルティの
強化、評価の充実と合わせて、きちんと徹底していく。入り口を広げて、出口をしっかりするという
考え。
―地震対策、耐震補強の、今後の展開は
佐藤事務次官 19年度までに橋梁、跨線橋、高架橋などの耐震補強を完成させる。それを筆頭に、そ
のほか必要なものはどんどん補強していくことになる。住宅についても、今後10年間で90%の耐震化
を目指していくことになった。耐震補強は、一丁目一番地の大事な問題。強力に進めていくことにな
る。
―道路特定財源の見直しについて。年内に基本方針をまとめることになっているが
佐藤事務次官 財務大臣と国土交通大臣が協力してまとめるよう、小泉総理からのご指示がある。私
たちもさまざまな角度から検討を重ねて、支えていくことになる。納税者のご理解をどう頂くかが一
番大事。
―建設投資が落ち込んでいる状況で、地方業者、中小業者の育成についての考え方は
佐藤事務次官 方向性としては三つあると思う。技術と経営力に優れた会社が活躍できる環境整備が
、一番大事だと考えている。そういう意味で、総合評価方式という、ていねいな発注をする。参入機
会の確保と不良不適格業者の排除という意味では、業績評価が大切。業績の良い会社が活躍できるよ
うに。二点目としては、どこにも負けない技術を持つ専門工事業への特化がある。これまでは、元請
け志向が大きかった。これから総合評価や業績評価をきちんとやっていくと、会社の方も手間がかか
る。そういった意味でこれからは、元請けのほか、効率の良い企業としての専門志向もある。それぞ
れの立場からしっかりやっていくという環境に期待したい。私たちも努力する。三点目として考える
のは、建設産業は地域の基幹産業であるということ。それぞれの地域でGDPの1割前後は支えてい
る。地域の活力も共に支えてきた。その産業が今、ピーク時の6割くらいに落ちている。逆に産業従
事者は1割くらい増えており、社会の全体構造として、リストラの受け皿になっている部分がある。
これは非常に大事なこと。これまで活躍してきた部分を、一層支えていく必要がある。地域の基幹産
業として、幅を広げて頂くという方向性もあるのかなと。新分野への展開という点も、環境整備に力
を注いでいきたい。