都市機構小野理事長
「経営感覚」が重要
地方都市再生にも意欲
都市再生機構
小野邦久理事長インタビュー
都市再生機構の小野邦久理事長は、日本工業経済新聞社などが加盟しているURクラブのインタビ
ューに応じた。その中で、独立行政法人としての「経営感覚」が極めて重要と述べている。また、地
方都市再生についても意欲を示した。
小野理事長との一問一答は次のとおり。
―10月に理事長へ就任したが、感想は
小野理事長 自由な意見交換のできる、風通しが良い組織だと感じている。
―今後の都市のあり方について
小野理事長 高度成長期に大都市へ人口が集中した。今、その歪みを受けている感がある。また、グ
ローバル化によって、国際的な競争が激しくなりつつある。世界各国の都市間競争に負けないような
、魅力があり、住みやすい都市にしていきたい。また今後、民間の方々の力を借りなければいけない
部分が多くなってくる。投資をして頂けるような都市再生事業を、誘導していく必要がある。
―都市再生機構が抱える課題は
小野理事長 一番大切なことは、「経営」という点を考えること。公団とは違い、独立経営体という
ことで機構が成立している。情報開示をしっかりして透明性を確保し、国民の方々から信頼を頂くこ
とが大事。また、都市の再生という国家的プロジェクトに、都市機構がどう係っていくのか、という
こと。民間がコンセプト、アイデアを出していける環境整備が重要だと考えている。
―都市機構として、公共の要素と民間の要素のバランスは
小野理事長 調和が重要な責務だと考えている。経営体としての役割を担いつつも、国の機関の一員
でもある。二つの相反する理念を調和させながらやっていくことが大事だし、私はできると思ってい
る。
―建て替え事業についての、官と民の役割分担は
小野理事長 都市機構は、民間と競争して勝ち抜いていくという考えではない。我々の役割は、あく
までも支援。ただ、いろいろなバリエーションがでてくると思うので、その都度、最善の方法を選ん
でいく。一番難しいのは、管理組合の合意形成。第三者に入ってもらった方が良いというケースでは
、我々の出番だと思う。―本格的な人口減少社会を迎える中での住宅需要は
小野理事長 少子高齢化が進んでおり、住宅の「量」は、世帯数を上回っているという統計もある。
しかし、「質」的には、まだまだ改善する必要がある。省エネや高齢者対策などは、大きな課題。「
量」的に充足しているからといって、やらなくてもよいという話ではない。
―地方都市の再生については
小野理事長 公団の時は、どちらかというと大都市圏中心だったというのは否めない。機構になって
からは、全国の中核都市に業務が広がり、いろいろな都市から引き合いを頂いている。都市機構への
熱い期待を感じる。今、地方に勢いがない。大都市は景気が回復してきたようだが、地方に行き渡っ
ていない。(地方都市の)要望にどう応えていくかということは、大変大事なことだと考えている。
―入札契約方式については
小野理事長 道路公団の橋梁談合事件を受けて、入札契約制度を変えた。一般競争の対象範囲につい
て、従来はWTOの24・3億円以上だったが、思い切って2億円以上まで引き下げた。競争性を高め
ることは、談合防止につながると考えている。また、指名業者名の公表を入札後にしたり、現場説明
会を廃止したりと、11月15日より変更している。総合評価方式については、大変重要な課題だと認識
している。品質、性能、デザインなどと価格との総合的な競争は大事だと思う。
―コスト縮減への考え方は
小野理事長 コストと提供物の品質は、相反する部分がある。どう調和していくか、強く意識してい
る。思い切って、必要なものにはお金を投じていかなければならない。
【略歴】
昭和39年3月東京大学法学部卒業、4月建設省採用。建設業課長、建設経済局長、大臣官房長、国
土交通事務次官などを経て、17年10月より現職。趣味はゴルフ、読書、マージャン。