国交省佐藤技術調査課長
JVは地域実情で新方式も
総合評価件数5割は最低ライン
佐藤直良技術調査課長インタビュー
国土交通省
公共工事品確法関連施策など、発注行政の最前線を指揮する国土交通省大臣官房の佐藤直良技術調
査課長は、日本工業経済新聞社のインタビューに応じた。佐藤課長は総合評価方式について、件数ベ
ース5割・金額ベース8割は最低ラインという認識を示した。新たに打ち出した補助事業における品
質確保については、自治体側にしっかり受け止めてほしいと話している。また議論が大きくなってい
る特定JVについては、混合入札によって、JVを組むかどうか参加者の判断に委ねるという基本的
な考え方を述べた。その上で、ノミネート方式も含め、各整備局が地域の実情にあった試行をし、共
通部分は全体のシステムに取り入れることもあり得るという見解を示している。
佐藤課長との一問一答は次のとおり。
―今年度、総合評価方式を件数ベース5割、金額ベース8割で行う方針を打ち出したが
佐藤課長 その数字は最低ラインと考えている。品確法施行2年目で、直轄では意識も相当高まって
いる。総合評価方式の定着へ、着実に向かっている。
―地方自治体の補助事業について、品確法の取り組みを確認する施策を打ち出したが
佐藤課長 品確法は法律で規定したのだから、その精神を理解し、守るというのは当然のこと。ただ
、現実的に市町村で充分な対応ができていない。これは由々しき事態だと考えている。補助金の入っ
た工事の場合は、適正な価格で良い品質のもの、品確法の精神を普及させる。国のお金をより有効に
、社会資本整備へ活用するという考え。「安かろう悪かろう」のものを造って、何年後かに危ない状
況にならないように。通達も出したのでこれから取り組んでいくことになるが、自治体に、しっかり
受け止めていただきたい。そのための努力を、私たちも続けていく。自治体のトップに内容を知って
いただきたいと考えている。
―JV制度について。直轄は混合入札という方向性を出した。これが、JV廃止に繋がると危惧する
声もあるが
佐藤課長 混合入札は、特定JVを組んでくることを排除しているわけではない。発注者がJVを組
みなさいと言うのは止めようということ。単体でいくか、それとも技術を補完するためにJVを組む
か、会社の自主的な判断に委ねる。JVを止めようと言っているわけではない。その点が、間違って
伝わっている感がある。
―四国整備局はノミネート方式導入を検討すると言われている。またオープンブック(施工体制事前
提出)方式を望む声も出てきているようだが
佐藤課長 (混合入札という)基本的な考え方を今回は示した。ただJVに関しては、立場によりい
ろいろな意見がある。特に地方公共団体では、地元の会社とJVを組むことを条件付けしている。地
元自治体の判断としては、理解できる部分もある。例えば地方の直轄工事で単体で、東京の大手建設
会社が受注したとする。その場合、地元の下請け会社や地元の資材を使うようにすれば、全部東京に
お金を持っていかれるといった心配はなくなる。
―ノミネート方式は、方向性としてあり得るということか
佐藤課長 またJVの考えを整理する時は必ずくると思う。いろいろな意見があるが、それをどう直
轄のシステムの中に取り入れていくか。四国整備局は先駆的に(ノミネート方式の)試行をやろうと
。またほかの整備局は、違う試行をするかもしれない。地域の実情に合わせた試行をやってみて、共
通部分があれば、直轄の全体のシステムに入れていく。ひとつひとつ試行してその結果を共有し、全
国レベルで整理すべき話は、通達を出すなどして枠組みを変えていく。
―入札ボンドについて。発注行政面からの観点は
佐藤課長 入札ボンドだけで、すべてが解決するわけではない。建設生産システム全体の中で、不良
不適格業者を排除するのにどういう位置付けとなるのか、整理をしなければならないと思っている。
入札ボンドを導入すると、建設会社もコストがかかる。そのコストを誰が受け持つのかという話も含
めて、整理が必要。システム全体の中で、どういう枠組みで入れ込むのが良いのか考えなければと思
っている。
―多段階審査方式の考え方について。いろいろな解釈が出ているが
佐藤課長 建設業許可、競争入札参加審査、個別工事の、三段階がある。多段階審査というものを、
個別工事だけで考えるのか。それとも、もっと前の段階の、建設業許可、あるいは2年に一度の競争
入札参加審査、ここまでさかのぼって考えるのかで、全然違ってくる。大きな議論の分かれ目になっ
てくる。個別工事ごとの発注という話だけではなくて、登録のほうの考え方も変えざるを得ない時期
にきていると思っている。
―具体的には
佐藤課長 業者さんの特質というか、例えばこの会社はこういう点は強い、こういう分野が得意とい
うようなものがわかっていれば、という考え方が公共工事に導入できないかと考えている。1件工事
ごとではなくて。
―入札の入り口の部分の議論が多いが、指名競争がなくなりつつある今、出口から入り口に良い循環
を繋げる必要性が指摘されている
佐藤課長 成績評定点の重要性は高まってくる。また、プロセスがしっかりしているかという点も大
切。品質とプロセス、どちらも見て、合わせて評価したいと考えている。個別工事間だけの循環だけ
でなく、競争参加登録までさかのぼる考え方も、あり得ると思う。今、建設生産システムをタブーな
く点検しようと進めている。現在は指名競争を前提にした枠組みで建設生産システムができているの
で、変えていく必要がある。発注者責任に関する懇談会で、いろいろな方向性を整理したい。