インタビュー

2007
2007/11/19
都市機構飯原理事インタビュー
2007/10/10
東京都猪瀬副知事就任インタビュー
2007/10/09
国交省平井たくや副大臣就任会見
2007/09/27
佐藤信秋参議院議員インタビュー
2007/09/26
冬柴国交大臣就任会見
2007/09/25
東京都新田財務局長就任会見
2007/09/19
民主党長浜ネクスト国交大臣インタビュー
2007/09/06
国交省松島みどり副大臣就任会見
2007/08/29
国交省冬柴大臣就任会見
2007/08/08
都市機構村山理事長代理就任会見
2007/08/06
東京都尾田港湾局技監就任会見
2007/08/02
国交省増田都市・地域整備局長就任会見
2007/08/01
森田実氏インタビュー
2007/08/01
東京都村山財務局長就任会見
2007/07/31
国交省辻原国土計画局長就任会見
2007/07/30
国交省小澤土地・水資源局長就任会見
2007/07/26
国交省中島建設流通政策審議官就任会見
2007/07/25
国交省和泉住宅局長就任会見
2007/07/20
都市機構渡部都市住宅技術研究所長就任会見
2007/07/20
国交省榊総合政策局長就任会見
2007/07/19
東京都尾崎水道局技監就任会見
2007/07/19
東京都道家建設局長就任会見
2007/07/19
東京都荒川オリンピック招致本部長就任会見
2007/07/19
国交省宿利官房長就任会見
2007/07/18
国交省柴田国土交通審議官就任会見
2007/07/17
都市機構廣兼業務企画部長就任会見
2007/07/17
都市機構白井業務第一部長就任会見
2007/07/17
都市機構大西業務第二部長就任会見
2007/07/17
都市機構根岸住宅経営部長就任会見
2007/07/17
国交省竹歳国土交通審議官就任会見
2007/07/12
国交省峰久事務次官就任会見
2007/07/09
下水道事業団石川理事長就任会見
2007/07/03
東京都只腰都市整備局長就任会見
2007/01/01
国交省冬柴大臣新春インタビュー
2007/09/27

佐藤信秋参議院議員インタビュー

◎「建設産業を元気に」

◎公共事業費の実質確保へ

◎予定価100%でも半数が赤字

◎佐藤信秋議員インタビュー



 7月の選挙で当選した佐藤信秋(さとう・のぶあき)参議院議員は、日本工業経済新聞社のインタ

ビューに応じ、活力あるふる里づくりへの思いを語った。「建設産業を元気にしたい」と抱負を述べ

ている。公共事業費については、平成20年度予算でマイナス3%シーリングとなっているものの、

特別枠などによる実質的な確保へ意欲を示した。また建設産業の近代化に向け、技能労働者を育成す

る仕組みづくりの重要性を説いた。入札契約では、予定価格100%で落札しても半数は赤字になっ

ている実態を国交省時代に研究したデータに基づいて語り、95%以上で契約されるように持ってい

くことが今後の目標の一つと述べている。







―参議院議員としての抱負は

佐藤議員 大きなくくりで言えば、安全で美しいふる里をつくる。そのために何をするか。いつも四

つ申し上げている。一つ目は安全という点からの、足腰の強いふる里づくり。二つ目は歴史・文化・

伝統の保存と育成。三つ目はふる里の基幹産業の再生。そして四つ目が、その中でも建設産業が厳し

い状況にあるという点について、具体的に直していくということ。


―足腰の強いふる里づくりとは

佐藤議員 災害に強いということと、人流・物流のネットワークをしっかりさせていくということ。

防災は予防と減災。その組み合わせをしっかり明確に考えるようになったのは、実は最近のことだ。

地震災害にしろ、そのほかの自然災害にしろ、あるいは人為的な災害もそう。大事なことは、災害に

対する備えをしっかりしておく。そのためには防災、予防という観点が大切で、常日頃の努力。それ

と、いざ何か起きた時の減災。災害を少なくする。両方ともハードだけではない。ハードとソフトを

組み合わせて、災害に強いふる里にしていく必要がある。また人流・物流のネットワークは、ふる里

にとってどうしても必要。東京はこれだけ道路もあれば、新幹線、地下鉄がある。みんなそれぞれの

ふる里が元気になろうとしたら、条件を一緒にしてほしいという声がとても強い。条件を揃えもせず

に元気を出せと言われたって、黙っているわけにはいかないというのが今までだった。それが段々と

、クレームをつけるだけの元気もどこまであるかというくらいに、地方がくたびれてきている。そう

いう意味で、足腰の強いふる里の構成要素としての人流・物流ネットワークの充実強化は、これから

10年20年の間に、大急ぎでやらなければいけない大事な問題だと思う。


―二点目の歴史・文化・伝統の保存と育成については

佐藤議員 ふる里の歴史・文化・伝統というものが、そろそろメリハリをつけて頑張れる状況になっ

てきているのではないか。どういうことかと言うと、古いものは捨てる、あるいは古いものを残すと

いう両極端ではない。良いものをしっかりと保全しながら、大いにそれを沢山の人に見ていただき、

宣伝する。そして残すべきものを残して、捨てるべきものは捨てる。そしてこれから先は、子供と孫

に自慢できるものをつくっていくということが大事。


―基幹産業の再生について

佐藤議員 ふる里の基幹産業は農林水産業であり、観光産業であり、そして建設産業。この三つが、

地方のベースになっている。そこでこの三つが健全に力を出し合って助け合うことが、ふる里を元気

にするために一番大事なこと。ただ、しかしそこが今、一番厳しい状況にあるのも確かだ。助け合い

、力を出し合う。そして多くのふる里の基盤をしっかりしていく。格差の是正と言われるが、何を具

体的にするかといえば、そこの部分だと私は思う。この三つに対して手当てをして、元気を出し合っ

てもらう。その手伝いをするのが、政治や行政の立場だろう。


―その中でも建設業は特に厳しいと言われている

佐藤議員 今申し上げた三点をやっていこうとすると、どうしても社会資本整備のレベルが、こんな

状況で良いわけはない。来年度予算も公共事業費という切り口ではシーリングマイナス3%というこ

とだが、色々な知恵と工夫を出しながら、実質的な確保をしっかりとやりたい。公共事業と言うとど

うしても抵抗が強いようだが、今言ったようなことをやろうとしたら公共事業費なのだから、安全な

社会、歴史と文化と伝統を重んじる社会、あるいはふる里の基幹産業に元気を出してもらう。これを

やろうとすると、社会資本整備はどうしても関係してくる。社会資本の整備は待ったなし。もうこれ

以上削らせてはならない。それが建設産業の再生に結果として反映すれば良いと思っている。社会資

本の整備がこれ以上待てないという状況だから、公共事業費も削り止めさせなければならない。その

結果として、建設産業全体としての売り上げ確保に繋がることと思うが、目的ではないことも世の中

に理解を求めていく。


―公共事業が減り続けている現状についてどうみるか

佐藤議員 アメリカの話をすると、まず2年前のニューオリンズのハリケーン・カトリーナ。30年

くらい前に、アメリカは公共事業費をどんどん削って半分以下にした。だから管理まで手が回らなく

なってしまった。その結果、道路が穴だらけになってしまったので、道路の整備管理を急激に増やし

た。道路は何とか復活したが、河川まで手が入りきれなかったので、ニューオリンズで被害が大きく

なった。そう言ってたら、今度はミネソタで橋が落ちた。結局、社会資本の整備管理をおろそかにす

ると、ああいうことが起きる。私はそれを言い続けている。それでは新しく造らずに管理だけすれば

良いではないかというと、それはとんでもない話。結局、維持管理するよりも付け替えるほうが安か

ったりする。あるいは機能的に、ただ付け替えただけでは駄目ということがある。管理と造るのとを

、常にバランス良くやらなければいけない。そういう意味で、今の公共投資のレベル、社会資本の整

備管理のレベルというのは、もうこれ以上削れない限界にある。ただ管理だけすれば良いということ

ではない。


―今後10年間の社会資本整備について

佐藤議員 これから10年経つと、我々のような団塊の世代が70歳を超えてくる。その間に日本と

いう国が競争力、成長力を持って、国際的にも元気を持っていて初めて、その延長線上で子供と孫と

が頑張れる。団塊の世代が70歳になってみんながへたり込むような社会と、そうではなく、子供と

孫とがそのベースをしっかりと生かしながら、国際的にも頑張れる社会と、どちらを目指すのか。私

も、10年20年先にどんどんと社会資本整備が増やせるとは思っていない。その場合に、あと10

年15年後の、その時点での社会資本レベルで競争力、成長力を頑張っていかなければならない。そ

ういう意味で、この10年間というのは非常に大事。


―疲弊した地域建設業を再生する、具体的な考え方は

佐藤議員 まずは体質改善。その意味でのダンピング防止だろう。民間の場合ももちろんだが、まず

は公共工事のダンピング防止を急ぐ必要がある。仕事をしたら赤字になるというのではどうしようも

ない。仕事をすればきちんと利益が上がって税金も払えると、そういう風に戻ってもらわなければい

けない。重層構造という日本の建設産業で、元請が下請、孫請にしわ寄せをしていたのでは大変。そ

れがまた労働者に跳ね返っても、もっと大変。こういう構造の中で、本当はダンピングなんてできる

わけがない。


―ダンピングについて考える場合、予定価格とは何かという視点がある

佐藤議員 予定価格は標準価格であり、予定価格100%で取っても、通常の利益を考えた時には、

赤字と黒字とが半々というのが実態だ。経済活動をするのだから本来、売上高の利益がなくてはどう

するのか。それが全然見込めない状況では、産業として成り立つわけがない。そのギリギリが予定価

格。予定価格100%で落とした場合、本来ならば一般管理費を取れなければいけないが、それどこ

ろかマイナスが沢山出ている状況にある。だから私は、予定価格について戦おう、と言っている。予

定価格がそんなにいい加減なものだったら、予定価格の90%で取っても儲かるということだろうが

、それはあり得ない。100%で取って、プラスとマイナスとが正規分布し、同じ数だけ出ている。

では予定価格とは何かというのは、これから私もしっかり考えていかなければならない問題。95%

から100%の間で入札契約というのはやってもらわなければならないし、そういう風に持っていく

ことが、私の一つの目標。そうでなければ、元請が下請にも労働者にもしわ寄せしないということは

できないとなりかねない。


―そのほかの具体策は

佐藤議員 建設産業の近代化を考えていかなければならない。例えば新しい技能労働者が、このまま

で入ってくるのかということ。技能労働者、職人育成の仕組みが必要。今まではそれぞれの親方や、

下請のそれぞれの経営者にお任せだった。もうこれからは、みんなで制度、仕組みを作っていくこと

が必要。基幹技能労働者が頑張れる具体的な仕組み作りをしていって、建設関連産業全体の近代産業

としての姿形を整えていくことが、大事な問題だと思っている。育てる制度がしっかりしていかない

と、技能労働者の世界は根っこから崩れていってしまう。この10年で技能労働者の年間収入は、大

体7割くらいになった。10年間で3割ダウンしている。それで1家4人暮らしていくのは大変なこ

と。ダンピングでたたき合って、しわ寄せが続いてきたことがあって、そんな状況になっている。今

度はどうやって直すのかが大事なこと。国として、あるいは産業界として、技能労働者の教育訓練、

所得と地位の向上をやっていかないと建設産業は根っこから崩れていく。


―地元新潟で中越沖地震が起きた。これからの復旧について

佐藤議員 一日も早く復旧してほしい。激甚指定もできるだけ増やしてほしいと思っている。公共施

設の復旧は災害査定を待たずにできるよう、3年前、私が国交省の技監だった時に仕組みを直してい

る。必要な復旧作業があったら先にやろうと切り替えた。災害復旧はその精神でやるべきであり、具

体的にはこれから一つひとつを洗い出してやっていく。具体の課題があれば地元からよく聞いて、そ

れをすぐに反映させるようにしたい。もう一方で、それぞれの皆さんの生活再建の支援がある。これ

は前向きに取り組む。今の生活再建支援法は、運用が厳しいなどの批判がある。使いづらいという問

題を含めて、被災者の皆さんの環境が少しでも良くなるよう努力したい。仕組みの問題として、変え

るべきものは変えなければいけない。


―公共工事品確法が今年度末で施行3年となるが、見直しなどの考え方は。守らない市町村は補助金

をカットすべきという声もあるが

佐藤議員 個別具体にどういう施策を取るべきということまで、私が今の時点で言うのは控えたいが

、方向性としては、県も市町村も徹底してやってもらわなくてはいけない。罰則はないが義務違反。

総合評価でやってくださいと言っているわけだから。事務的になかなか大変なのはわかるが、そこは

現状を確認したうえで、更なる徹底を図るためには何をするべきか。ペナルティーも含めて詰めなけ

ればいけないと思う。世界中で、公共工事を値段だけで決めているのは日本くらい。値段だけで決め

ようと思ったら、どんどん安くしようとする。どこかで限界がくる。自分の家を造る時に誰も、安け

れば安いほど良いという人はいない。それなのに、公共工事だけはなぜ安ければ安いほど良いと言っ

ているのか。これはとんでもない話。安ければ安いほど良いと言って造っている構造物は、そのうち

にどこかでしっぺ返しを食うことになるだろう。

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