インタビュー

2009/07/02

利根川上流所長インタビュー


◎大利根地区で盛土を

◎国土交通省関東地方整備局 利根川上流河川事務所長 田所正 所長




…事務所の概要からお願いします。


田所 下流は茨城県取手市および千葉県我孫子市、上流は群馬県伊勢崎市および埼玉県上里町までの

約100kmの利根川本川を管轄してるほか、渡良瀬遊水地の整備と管理も行ってます。関係する県は、

千葉・茨城・埼玉・栃木・群馬の5県で、管内には上流から八斗島(群馬県伊勢崎市)、川俣(埼玉

県羽生市)、大利根(埼玉県大利根町)、目吹(千葉県野田市)、守谷(茨城県守谷市)、藤岡(栃

木県藤岡町)、古河(茨城県古河市)、渡良瀬遊水地埼玉県北川辺町)の計8カ所の出張所がありま

す。21年度は、全体予算143億円で埼玉県内分は44億円となってます。そのうち、首都圏氾濫区域

堤防強化対策に合わせて渡良瀬遊水地と稲戸井調節池の掘削とを一体的に進めていく事業が目玉とな

ります。


…首都圏氾濫区域堤防強化対策の21年度事業概要は?


田所 これは、当事務所における最重要事業です。利根川右岸の江戸川分派から小山川合流点の約50km

区間において、堤防の盛土工事を行い、堤防断面をさらに大きくすることで、堤防の強化を図ります。

そのうち、東北自動車道から下流側(約23km)の?期区間を優先的に進めます。?期区間は全体で地

元の了解が得られましたので、21年度は用地買収を本格化させ、順次、大利根、加須地区で盛土工事

を実施します。


…この事業と渡良瀬、稲戸井との一体化とは?


田所 実はこの、首都圏氾濫区域堤防強化対策で使う土は渡良瀬遊水地や稲戸井調節池の掘削で発生

した土砂を使用するのです。調節池を大規模に掘削することは、自然環境を改変することになります

ので、自然保護の観点からさまざな議論を重ねてきました。このほど、稲戸井調節池については発生

土砂の再利用などに対して合意が得られましたので、21年度から試験掘削を行います。渡良瀬遊水地

も21年度に計画を作成し、来年度から掘削工事に入る予定です。これは、昨今の公共事業が抱える問

題の一つの特徴的な事例で、公共事業で環境を破壊するのではなく、公共事業でより良い環境を作っ

ていくものとして、位置づけられるのです。


…北川辺地区の堤防整備についてお願いします。


田所 ここは埼玉県内でも唯一、利根川の左岸側にある地域で、利根川と渡良瀬川に挟まれた地域で

もあり、洪水等により被災した場合、浸水深も5m以上となる事が考えられます。そこで、漏水の危

険性が高い場所について、川表の築堤を進めて行きます。さらに、21年度では北川辺町土部で町の避

難場所整備とあわせた幅約90mの高規格堤防整備についての詳細設計も予定してます。


…仕事を進めていく上で、大事にしている事は?


田所 着任して1年半になります。その前は、鳥取県の県土整備部長を2年経験し、きめ細かい仕事が

多く、住民との接点も密接でした。当事務所の仕事は五つの県にまたがる大規模な事業となりますが、

個々の工事はきめ細かく取り組む必要がありますので、十分な配慮を心がけています。工事の発注に

おいても、建設業界の技術力が適切に発揮できるように、公平性・透明性を高めていきます。


・・・・・・・・・・・


=略歴=


 田所正(たどころ・ただし)

 昭和32年12月24日生まれ・広島県出身

▽昭和55年 東京工業大学工学部(土木)卒業▽昭和55年 建設省九州地方建設局 入省▽平成2年 

九州地方建設局企画部企画課長▽平成6年 中部地方建設局庄内川工事事務所長▽平成13年 国土技

術研究センター調査部第一部長▽平成17年 鳥取県県土整備部長▽平成19年12月 現職

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら