インタビュー

2009/07/28

桐蔭横浜大学法科大学院教授 鈴木満氏インタビュー

◎21年度・キャンペーン『建設業はいらないんですか?』

◎桐蔭横浜大学法科大学院教授・鈴木満氏インタビュー

◎競争が産業を強くする

◎総合評価方式の問題も指摘


 桐蔭横浜大学法科大学院教授で弁護士の鈴木満(すずき・みつる)氏は、「入札談合の研究」(信

山社刊)の著者でもある。鈴木氏は入札には納税者側の立場から「公開性」「効率性」「客観性」「

公正性」の4つの条件が必要とみている。横須賀市や立川市長野県などの入札改革に携わった鈴木氏

に、建設業の現状や総合評価方式の問題点などを語ってもらった。

     ◇

 ―談合などで建設業のイメージは悪いが、現状についてどうみるか。

 鈴木 私は2006年を明治維新と言っている。2005年12月に大手ゼネコンが談合離脱宣言

をした。その後、土工協からも、古いしきたりからの脱却という宣言もあった。実際に落札状況をみ

ると、談合が本当になくなるような感じを受けた。地元業者だけしか入札参加させていないところな

どは一部残っているが、規模の大きな工事を中心に、7~8割くらいは談合が崩れている状態になっ

たのではないか。2005年以前は、違法行為をしきたりとしてやってきたのだから、誇れるものは

何もない。まともな業界になってきたという評価はしている。ただ談合は簡単に復活できる。与党も

野党も発注地域を狭めろと言っている今の状況をみると、また復活する可能性がないと言えない。

 ―建設業は今後、どうあるべきか。

 鈴木 保護された業界は絶対に伸びない。農業も金融業もそう。護送船団方式というのは、皆が一

致して動くわけだが、速度は誰に合わせるかというと、一番能力の低い船。努力する人が報われる仕

組みにしないと経済は発展しないが、努力しても報われない。みんな平等で、みんな駄目になってし

まう。地域で地元業者だけ云々といった小さなパイの中でやっているから、大きくなれない仕組みに

している。そうすると構造改善がされなくて、業界全体が沈没してしまう。厳しさ、競争がないと、

産業は本当に強くはなれない。

 ―最低制限価格引き上げの動きについて。

 鈴木 最近は人為的に最低制限価格を上げようとしている。85%を90%にとか。官製価格にな

ってしまっている。役人が価格をコントロールして良いのかと思う。市場価格を無視して最低制限価

格をどんどん上げていく。85%でできる人は納税者からみて望ましいのに、失格してしまう。不況

期は体質を強くする。逆境は良い点もある。最低制限価格をどんどん上げているというのは、子供が

ちょっと溺れかかったらすぐに浮き輪を投げているようなもので、それでは泳ぎは覚えない。

 ―総合評価方式について。

 鈴木 評価結果の発表がないから、なぜ負けたのかわからないことがある。天下りを受けた企業が

有利になっているかもしれないという疑心暗鬼が起きる。一番合理的な行動は天下りを受けることで

はないかという状態にしている。ただ、知っている人が教えてくれたら助かるという状況だ。評価さ

れる側とする側というのを維持したいためにやっているような状態。総合評価は、価格と価格以外の

ものを総合に評価する。プロボクシングのアリとプロレスの猪木が戦ったことがあるが、ルールの決

め方によって勝負が決まってしまう。人為的に負けないルールができてしまう。価格というのは一番

、客観性がある。介護や農業へのシフト、業種転換をするための融資とか環境整備、それが行政のや

るべきこと。入札制度と産業政策とは別だと思う。入札制度は納税者の最も有利な方法だ。良い仕事

をする業者が報われるように、工事成績が良いところを優遇するなどだろう。

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