平成建設秋元久雄社長インタビュー
◎21年度・キャンペーン『建設業はいらないんですか?』
◎?平成建設(静岡県沼津市)代表取締役社長・秋元久雄氏インタビュー
◎儲からない会社はやめろ
◎改善の余地多い業界
大卒や大学院卒を「大工や職人」として正社員で採用し、外注をせず自社内で一切をまかなう「内
製化」で注目を集める?平成建設。代表の秋元久雄氏は、中堅ゼネコンやハウスメーカー勤務後に同
社を設立。今や大学生の就職希望ランキング(ゼネコン部門)でベスト10に入る。建設不況の中で
業績も右肩上がりだ。静岡のみならず神奈川にも出店し、来年は東京への進出も予定。独自の道を行
く秋元社長の言葉は厳しい。
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―建設業界は不人気で新人が入ってこないが。
秋元 ハナから学生は来ないとあきらめているのか、合同就職説明会で地方の中小建設業者を見た
ことがないよ。社長を始めとして社員総出であらゆることをしなければダメだ。「うちの会社は田舎
だから学生が来ない」と嘆く業者もいるが、馬鹿なことを言うな。東京はあらゆる企業が沢山揃って
いるからむしろ埋没するだけ。田舎ならUターン組をつかまえられる。
―一方で大工や職人の高齢化も問題となっている。
秋元 「取り付け屋」の作業員はいるが、仕事のできる大工や職人が減っている。今の大工や職人
の多くは50~60歳。10年後20年後はどうなるか。日本の危機ともいえるが、打開する方法は
ない。教育制度を変えるしかないだろう。優秀な大学に大工や職人を養成する学科を設置しなければ
ダメだ。
―公共事業減で建設業者の仕事がない。民間受注が頼りだが、どうすれば受注を増やせるか。
秋元 従来どおりの経営で既存の民間業者と競争してどれだけ仕事を取れるか疑問だが、受注する
には頭を使って工夫するしかない。それと営業力をつける。それができなければ、撤退するしかない
だろう。
―それでは公共も民間もダメという状況で、会社経営は難しい。
秋元 無理ならやめた方が良い。だいたい業界に50万社は多すぎる。そもそもどうして建設業を
やっているのか。地方中小の多くは家業で建設業をやっているが、本来は伝統があってこそ家業。そ
れを既得権だけで家業をやっている。スポーツ紙と専門紙を持って打ち合わせにいくだけ。のんきな
もんだ。そんな業者はいらない。建設業界はムリ・ムダ・ムラが多く、改善の余地が無限にある。
―建設会社が生き残るためには、どうすれば良いか。
秋元 人のやらないことをやる。それには勇気と能力が必要だ。不安があってもチャレンジするし
かない。失敗するのは当たり前で、試行錯誤を繰り返して前進するしかない。新分野進出も、座して
死を待つよりはやった方が良い。
―伝統建築を守るためにも「内製化」を真似してほしいとのことだが、平成建設に続こうとする企
業にアドバイスを。
秋元 時間はかかる。でも10年あればやってやれないことはない。会社を未来永劫やりたいなら
ば、儲かろうが儲からなかろうが、やるしかない。儲からないなら会社をやめれば良い。倒産は多く
の人に迷惑がかかるが、やめられる時に整理して廃業すれば誰にも迷惑がかからない。