インタビュー

2009/08/01

NPО水のフォルム代表 藤原悌子氏インタビュー

◎逃げずに説明責任を

◎個々の防災より大型工事

◎NPО水のフォルム代表藤原悌子さん


 国・県・市の委員会で、行政にとって耳に痛いこともビシッと意見を言う人こそ、NPО法人水の

フォルム理事長の藤原悌子(ともこ)さん。藤原さんは水の分野に詳しく、自ら学んだことを機関誌

を通じて発信するとともに、そこで必要と思われた実践活動にも精力的に取り組んでいる。以下、取

材内容は次のとおり。

―水管理を学んで河川の大型事業などについて

藤原 日本は水災害がついて回る国ですから、あらゆる手だてをしておきたいと考えるのは当然でし

ょう。

江戸時代はその初期こそ幕府が頑張ったけど、すぐにお金がなくなって自普請負担になった。だから

国民は泥水に浸かって暮さねばならなかった。 

明治政府もあまりお金がないから形を整えた程度。今やっと国レベルで大規模事業ができるようにな

って、一定の安全性が確保されるようになった。

個々の防災だけでは無理だから、個々の雨水貯留では足りないから、大型事業が必要なんでしょう。

―建設業、公共事業の関りとイメージは

藤原 以前はパンフレット作成などで入札に参加しましたが、年度末に呼ばれて「こんな時間では無

理です」と質問すると、発注者も受注者も黙っている。廊下に出れば談合。その輪から逃れるのも大

変だった。

そういったあまり美しくない場面も体験していますが、だからと言って、部分の問題で全体を封じた

らそれこそ本末転倒です。

―公共事業においてほかに問題点は

藤原 最近、民意がすべてのように言われますが、民は素人。素人判断に頼るなんて危険です。それ

に成熟社会を迎えてニーズも多様化。振り回されて終わるのではと危惧しています。

私は専門性には必然的に無駄や齟齬が伴うから横断的・総合的視点の必要性を言ってきましたが、総

合判断というのは、専門がしっかりしていての話。専門が腰砕けじゃ意味がない。専門があって、そ

の間隙を埋めるところで市民が協力すればいいと思っています。

―今後の公共事業で必要なことは

藤原 専門家も一度初心に返って歴史に学んでほしい。自らが確信をもって話せば民意は動く。そし

て後世の財産になるような事業をしてほしいです。

―県が設置した八ツ場ダムの懇話会の委員にも入っていましたね

藤原 都市を構築するならダムにしろ、地下水にしろ、農業用水の転用にしろ、安定供給できる水の

用意が必要。県は農業用水はすでに転用済みだし、地下水は地盤沈下を起こすし、ダムで用意するし

かない。だからその必要性を言いました。

とはいえ水源地には多大な迷惑をかける。でもこの社会、下流域で経済を支えている面もある。だか

ら上下流協力で流域全体をよくしていけば、と思うけど、埼玉県民が八ツ場に感謝して定期的に訪ね

ているという話は聞かない。それは誰もきちんと説明しないからでしょう。民意を言うならまずその

教育からです。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら