インタビュー

2011/04/01

東レ水処理・環境事業企画管理室 丸橋清之課長インタビュー

◎東レ 水処理・環境事業企画管理室 丸橋清之課長インタビュー



 東レ(東京都中央区、日覺昭廣社長)のRО(逆浸透)膜が世界市場を席巻している。海水淡水化

プラント用の出荷量は2010年度、世界トップである。独自の優れた水処理膜技術をベースとした

幅広い製品ラインナップに加え、従来以上の高性能なRО膜を開発したことなどが世界から高い評価

を受けて、日米欧に加え中東、北アフリカ、中国へとグローバルに事業を展開、実績を積み上げてい

る。そこで同社水処理・環境事業企画管理室課長の丸橋清之氏にRО膜の現状と今後の展望などにつ

いてインタビューした。

   ◇

 ―RО膜の実績が伸びているようですね。

 丸橋 海水淡水化の分野が非常に伸びています。北アフリカから中東にかけて、ここ数年の間に大

きな海水淡水化プラントにRО膜が採用されました。造水機能がより高まっていることが評価された

と思います。かん水淡水化プラント用RО膜が大きな用途でしたが、現在は海水淡水化プラント用が

主力市場である中東、北アフリカに加え、中国や豪州などアジア・太平洋でも伸びています。特に中

東や北アフリカでは10万tを超える超大型プラントが多く稼動し、建設されています。

 ―いつ頃から実績が伸びているのですか。

 丸橋 2005年以降、急激に伸びました。当社だけでなく他社でも同様に伸びています。これま

で中東では蒸発法による海水淡水化が主流でした。蒸発法は海水を熱して蒸発させ、再び冷やして真

水にします。大量の水を作り出すことができますが、熱効率が悪く多量のエネルギーを投入する必要

があります。これに対しRО膜による海水淡水化は設備費が安く、所要エネルギーが小さいなどの理

由により、蒸発法に代わり使われてきました。しかもエネルギーの豊富な中東でさえ、蒸発法よりコ

ストが安いため、今ではRО膜が主流になっています。

 ―RО膜の出荷量は東レが世界でナンバー1と聞いていますが。

 丸橋 これはRО膜のシェアだけに限りますが、2010年度は世界でトップと見ています。とい

うのは、本年稼動を予定しているアルジェリアとバーレーンの2つの超大型プラントに昨年、納入し

たことで出荷量が増えたためです。当社はRО膜のほかに海水淡水化の前処理としても使用するUF

膜やМF膜、さらにМBR用膜も出荷していますので、これら製品を合わせて膜事業全体で2010

年度は世界でトップとなったと考えています。

 ―マーケットシェアが高い国はどこでしょうか。

 丸橋 RО膜の主なマーケットは中東、北アフリカですが、近年は中国でシェアが伸びています。

2009年、北京で水処理合弁会社を設立し、今年1月からRО膜の生産を開始しました。中国北部

の内陸部は慢性的な水不足で、南部を流れる揚子江も水質が悪化しています。飲料水にするためには

除濁しなければなりません。内陸部ももっと造水しないと、水不足は慢性化する恐れがあります。そ

こで下廃水を再利用して工業用水等として使われていますが、十分ではありません。

 ―中国でのRО膜の納入実績は。

 丸橋 海水淡水化では青島で日量10万t造水できるプラントに今年、納入します。このプラントは

中国最大のものです。青島の人口は約750万人ですが、このプラントでは約40万人の生活用水に相

当する造水をすることができます。また、大連近くの沿岸部の都市にも5万t造水できるプラントに

納入する予定ですが、まだまだ足りる状況ではありません。浙江省や河北省、遼寧省には数万t規模

のプラントにRО膜を納入していますし、北部内陸部の寧夏や南部の広東東莞、さらに天津東郊で稼

動している下廃水再利用プラントに納入しています。また上海、山西、山東、雲南の各省にもかん水

淡水化プラントに納入するなど中国でのマーケットシェアは拡大しています。


紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら