インタビュー

2012/05/10

JICA東南アジア・大洋州部東南アジア第四課企画役 小島岳晴氏 インタビュー

◎JICA 東南アジア・大洋州部 東南アジア第四課 企画役 小島岳晴氏



 ミャンマーへの注目が高まっている。日本政府は円借款を再開する方針で、インフラ整備を行って

いくことも表明。経済産業省はミャンマー政府がヤンゴン市南方に整備を計画している、従来支援対

象としていなかったティラワ経済特区(SEZ)に対する協力を検討しており、国際協力機構(JIC

A)もその周辺インフラ整備を期待されている。経済特区に隣接するティラワ港の調査にも乗り出す

など、ミャンマーの経済成長への関与を深めつつある。そこでJICA東南アジア・大洋州部東南ア

ジア第四課企画役の小島岳晴氏にミャンマー国のインフラ整備の現状と課題、今後の援助のあり方な

どについてインタビューした。

   ◇

 ―ヤンゴン市近郊にあるティラワ経済特区の計画について教えてください。

 小島 経済産業省がティラワ経済特区(SEZ)を支援しており、現在、調査を行っています。総面

積約2400haに大規模工業団地を造る計画で、最先端技術を持った日本企業を誘致すると聞いてい

ます。


 ―JICAはこの経済特区にどういった形で参画されるのか。

 小島 JICAはティラワ経済特区周辺のインフラを整備する予定です。また経済特区と連動させ

るティラワ港の調査もします。ティラワ港には、既存のバースがありますが、需要増が予想されるこ

とから、新たなバースを建設する予定です。河川港なので水深の確保や航行上の安全等にも配慮する

必要があると考えています。


 ―ヤンゴンは下水道施設の老朽化が激しく、ほとんど機能を果たせず、雨が降るとそのまま水が溜

まってしまうと聞いていますが。

 小島 ヤンゴンは低地にあり、その通りです。上下水道ともに施設の老朽化が激しく、特に上水に

ついては慢性的な水不足・断水や高い漏水率、供給される水の質の問題があると聞いています。どう

いう形で支援するのか、今後考えて行きたいと思います。


 ―インフラ整備のほかにどういう案件を実施されているのですか。

 小島 例えば、ヤンゴンやマンダレーの病院は他の病院で処置不能な重篤患者を広範囲にカバーで

きるトップレファラル(中核)病院として位置づけられています。しかし、医療機器の老朽化はもと

より故障が煩雑に起き、医療サービスの質が著しく低下しています。過去に無償援助を高く評価する

ミャンマー政府から、新たな協力要請がありました。


 ―ミャンマー国全体では、他にどのような計画がありますか。

 小島 先日発表された日本政府の「対ミャンマー経済協力方針」は?国民の生活向上のための支援

(少数民族や貧困層支援、農業開発、地域開発含む)、?経済、社会を支える人材の能力向上や制度

の整備のための支援(民主化推進のための支援含む)、?持続的な経済成長のために必要なインフラや

制度の整備等の支援-の3つの柱から成り立っていますので、それに基づいて案件を調査しています。

ミャンマーには多くの支援ニーズがあり、それぞれについて、今後どのような形で支援できるのか、

検討しています。


 ―JICAがミャンマーに対して、まず取り組まなければならない課題は。

 小島 課題はたくさんありますが、今後、ミャンマーがより多くの援助を受け入れるのであれば、

ミャンマー政府自身が体制をしっかり整えてもらいたいと思います。各国・援助機関からの援助が増

えることが予想され、ミャンマー政府はそれら援助を有効に活用して自分のものにする体制を整える

必要があると思います。この点についても可能な支援をしたいと思います。JICAはバランスのと

れた援助を実施することが大事だと思っています。経済発展も重要ですが、少数民族の方々もたくさ

んおられますし、国内にはまだ貧困に苦しむ方々が多数おられます。そのような方々にもミャンマー

の民主化の恩恵や日本からの支援が届く必要があります。いずれにしても、日本政府や国内外の関係

機関、民間セクターの方々ともよく打ち合わせながら、スピード感を持って進めたいと考えています。


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