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建専連会長 才賀清二郎氏 インタビュー 2013/11/21
◎才賀清二郎建専連会長インタビュー
◎建設業は賃上げと保険加入を




 東日本大震災の復興や老朽インフラ更新、さらに2020年東京オリンピック開催決定で工事増加
が見込まれるなか、建設業を支える技能者の不足が深刻だ。特に専門工事を担う中小建設会社は、安
値受注による経営圧迫で賃金低下を余儀なくされ、若者の入職減などから経営難に陥っている企業は
少なくない。社会保険に加入しない企業も多く見られる。そこで問題解決に向け、懸命に取り組んで
いる建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長に現状と今後の取り組みなどについて聞いた。

 ―賃金の低下、若者の入職減少などで建設業の未来が危ぶまれています。問題解決に向け今後の取
り組みについて、まずお聞かせください。
 才賀 建設現場で働きたいという若い人たちの賃金を上げて、建設現場で安定的に働けるようにし
たい。ただ雇う側の問題もあって専門工事業者の多くは社会保険に加入しておらず、特に若い人たち
はなかなか建設現場で働こうとしない。将来を担う若者が希望を持って働ける環境整備に今後も取り
組んでいきたい。

 ―このような状況の中でも、公共工事は増えているという印象はありますが。
 才賀 公共工事はそんなに増えていない。増えているのは岩手、宮城、福島の東北3県だけ。まだ
まだ従来通りでしか予算は執行されていない。しかし、これからは2020年東京オリンピック開催
に向け、建設工事が増えると思う。大いに期待しているが、建設現場で働く人が足りない状況にある。
都合よく人が集まるのかどうか懸念している。
 民主党政権時代、公共工事の削減で建設労働者が業界から離れていった。月額15万円程度の賃金し
かもらえず、15万円程度でまた建設現場に戻ってきてくれないかと言っても所詮、無理な話だ。工業
高校生に建設現場で働いてもらえるよう募集しても応募者は皆無に近い。雇う側の企業が社会保険に
加入してないし、従業員専用の宿舎も用意されていない。雇う側の企業が労働者のために最低限守ら
なければならないものを守っていないのだから、建設業に応募する人は少ない。

 ―打開策はないのでしょうか。
 才賀 今年6月に第12回建専連総会で、
?適正価格で受・発注し、現場で働くすべての就労者が社会保険等に加入し、安心して働ける環境整
備を図る
?適正価格で受・発注し、適正利潤を確保し、技能労働者等への適切な賃金の支払い等を行い、健全
な企業体質にする
?安値受注を繰り返し、指値をしてくる企業とは契約を行わない
?登録基幹技能者の地位向上と下請け評価制度の体制整備を図る
?若手技能労働者の確保・育成と技能・技術の伝承ができる企業体制を確立する―を決議した。
 会員企業には上記5項目のコンプライアンスをきちっと守ってほしい、と提言した。守らないよう
な企業は潰れても仕方がないという強い姿勢で取り組んでいる。仕事があるときは人が集まり、仕事
がないとやめていく、その繰り返しを長年行ってきたから国が企業に対して、いくら指導しても雇わ
れる側の不信感は根強いものがある。だから雇う側の企業がきちっとした経営施策を打ち出さない限
り、人を雇用することは難しい。コンプライアンスを守らないような企業は人材育成ができないから、
継続的な事業展開もできない悪循環に陥っている。コンプライアンスをきちっと守っている企業は、
雇われる側も安心だし、継続して雇用できる。
 上記5項目は、ダンピングをやめさせるためにも決議した。人を育てている企業しか受注できない
ような競争環境をつくった。こういうことを提言しない限り、建設業界は一向に前に進まない。建設
業を健全な産業にするには、一過性のものでなく、将来を見通せるような計画性のあるものを提言し
ないと建設産業は成り立って行かない。若い人たちが建設業界に積極的に入ってもらうには賃金を上
げ、社会保険に加入して待遇を良くすることが一番なのだから。

 ―建設業の人手不足はどこに原因があると思いますか。
 才賀 若い人が入って来ないような状況にしてきたことが最大の原因だと思う。人を育て、社会保
険に加入させ、宿舎を建てる。こういう企業であればかならず人は集まる。私はそう信じている。仕
事があったときだけ労働者を集めるのでは、企業として失格といわざるを得ない。

 ―厳しい現状ですが、今後は建設業界全体で取り組む必要がありますね。
 才賀 三位一体とよく言われるが、今後は国、発注者、総合工事業、専門工事業、労働者が“五位
一体”となって取り組む必要がある。発注者とゼネコン、さらに専門工事業者、労働者が一致団結し
て一つにならないとうまくいかない。東京オリンピック開催に伴う競技場建設も5者が一体となって
取り組まなければうまくいかないだろうと思っている。
 人手不足でオリンピック関連施設が建たないことはないと思うが、100%人手が足りているのか
というと首を傾げたくなる。ゼネコンが総出で取り組んでいけば何とかなると思うが、厳しい状況に
あるのは間違いない。
 ようやく日本の経済が上向いているなかで、2020年東京オリンピック開催が決定した。国を挙
げて取り組むわけだから建設業界も一生懸命に取り組まなければならない。ただ、オリンピック終了
後に仕事がなくなったら若い人はまず建設業界で頑張ろうという気持ちにならないと思う。賃金の安
い労働者を集め、安値で受注し経営していこうということがなくならない限り、建設業界はもっと悪
くなる一方だ。

 ―建設労働者の数が以前に比べて減っているようですが。
 才賀 現在、建設労働者の数は国交省によると約497万人いるといわれ、そのうち55歳以上が34
%、29歳以下が11%。長引く建設需要の低迷で高齢化も進み、5〜6年後には多くが引退するとみら
れ、将来、相当規模の不足が生じるとの見方もされている。
 専門工事業で年間300万円以下の給料をもらっている人は少なくなく、社会保険にも加入できな
い状況だ。今の状態が続けば、ますます人手が不足するのは間違いなく、業界全体でも危機感を募ら
せている。

 ―外国人労働者を雇い入れないのですか。
 才賀 私は全く考えていないが、建専連に加入するいくつかの団体が外国人を日本に呼んで研修さ
せている。約1年、日本語の勉強と研修を受けた後に就業させている。現在、多くの外国人労働者が
建設現場で働いているが、一人前の職人になるには10年はかかる。だから、一線を退き、技能技術の
資格を持った65歳以上の人が海外で教えることは必要なことだ。日本のゼネコンが海外で受注したと
きに、研修を受けた外国人を現地採用できるし、一定の技能技術を習得しているので雇う側としても
安心だ。もう少しハイレベルなものを勉強させようと思ったら、日本で勉強させる。技能技術もない
外国人を日本に連れてきて働かせるのは危険な行為だ。外国人労働者を当てにしているようでは、日
本の建設業の未来はないと思っている。

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