インタビュー

2014/01/07

尾根田東京都水道局東部建設事務所長インタビュー

◎尾根田東京都水道局東部建設事務所長インタビュー





 東京都水道局三郷浄水場の高度浄水施設(二期)が昨年秋に完成した。これで利根川水系より取水

する水の全量が高度浄水処理され、より安全でおいしい水が蛇口まで届けられている。計画段階から

長い期間、高度浄水事業に関わってきた東京都水道局東部建設事務所の尾根田勝所長にインタビュー

した。


            ◇


――三郷浄水場高度浄水施設(二期)の完成で、利根川水系より取水する水の全量が高度浄水処理さ

れておりますが、高度浄水処理の仕組みとその導入の経緯について。

 尾根田 東京都水道局三郷浄水場高度浄水施設(二期)で導入したのは、凝集沈殿と砂ろ過の2つ

の行程の間でオゾンと接触させ、その水を生物活性炭処理するものです。オゾンの強い酸化力によっ

て有機物を分解し、さらに活性炭の吸着作用に加えて、活性炭表面に繁殖する微生物の生物酸化作用

によって、有機物などを除去します。その後、通常行程の砂ろ過をして、お客さまにより安全でおい

しい水を供給しています。

 高度浄水施設の導入については、昭和40年代後半、いわゆる高度経済成長時代に日本の人口が増え、

住宅や工場があちこちで建てられました。それに伴い、河川などの水質が悪化し、下水道整備も追い

付けないような状態にありました。住宅からは生活雑排水、工場から排水される未処理水が、そのま

ま河川に流れていて、お客さまである都民の方から「カビ臭い」という苦情が多く水道局に寄せられ

ました。

このため、臭いを取るため海外の文献等を調べたり、いろいろな方法を試すなど努力をしました。そ

して平成4年、最初に金町浄水場に高度浄水処理を導入することができました。その後、順次、他の

利根川水系の浄水場にも整備を進め、金町浄水場では、平成元年の一期工事着手から約四半世紀かけ

て、昨年4月に三期施設が完成しました。

これにより、金町浄水場で処理する水の全量が高度浄水処理された水となり、金町浄水場の給水区域

である区部東部地域には100%高度浄水処理した水が供給されています。三郷浄水場も昨年10月

に完成し、利根川水系の給水区域全域で高度浄水100%が達成され、これで区部全域に、より安全

でおいしい水が蛇口まで届けられるようになりました。

 ――利根川水系の水は、流域河川でのカビ臭など原水水質に課題を抱えていたということですが、

これでカビ臭などの問題はすべて解決されたのでしょうか。

尾根田 四半世紀かけて利根川水系の浄水場は全て高度浄水処理ができるようになりましたので、カ

ビ臭等の問題は現段階で解決できたと思っています。ただ、これまで原水水質が良好で、高度浄水処

理をする必要がなかった多摩川水系は、近年、徐々に水質が悪くなっています。現段階では高度浄水

処理をしなければいけないという状況ではないのですが、これ以上原水の水質が悪化するようであれ

ば、何らかの対応が必要になってくると思います。これからも注意深く水質の動向を見極めていきた

いと思います。

 ――都民の方々を対象に水道水と市販のミネラルウォーターの飲み比べを実施したところ、5割の

方が水道水のほうが「おいしい」と答えたという結果が出ましたが、「カルキ臭くて、まずい」とい

うイメージは完全に払拭されると思いますか。

 尾根田 昨年、延べ5万人以上の方に飲み比べをしてもらいました。その結果、「水道水のほうが、

おいしい」と答えて頂いた方がほぼ半分いらっしゃいました。しかし、水道水のカルキ臭さが、イメー

ジとして払拭できない方も、まだ半分ほどいらっしゃいますので、東京水道をもっともっとPRして

いかなければならないと思います。

――「さらに安全でおいしい水道水づくり」を今後も目指されると思いますが、将来ビジョンみたい

なものがあればお聞かせください。

 尾根田 高度処理をすることによって、ミネラルウォーター並みの安全でおいしい水を十分に給水

できるようになったと思いますので、この施設を有効に使いながら、確実に安全でおいしい水を給水

していきたいと思います。また、原水水質の動向には常に注意を払いながら、水処理技術の研鑽に努

めていく必要もあると思っています。

さらに、高度浄水施設でせっかくおいしい水を作っても、途中の管路が腐食していると味を損なうこ

とがあります。現在、都内には延長約2万6000?m以上もの配水管が埋設されていますが、老朽

化した管を新しい管に更新する工事も計画的に進めています。これは、万が一、東京で大地震が起き

ても、被害を最小限に抑えるための耐震化にもなります。


紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら