東京都中小建設業協会上之原副会長インタビュー
◎東京都中小建設業協会上之原副会長インタビュー
今、建設業界で技能労働者不足が深刻だ。サッシやエレベーターなど製品が納入されても半年過ぎ
ても取り付けられない現場は少なくないないという。中小建設業はより深刻な状況にあり、業界を挙
げて抜本的解決策を見出す必要性があるが、対策は遅々として進んでいないようだ。そこで、東京都
中小建設業協会の上之原孝副会長に現状と課題について聞いた。
◇
――技能労働者不足問題が深刻です。都中建では何かアクションは起こしていますか?
上之原 解決に向けての話は出ていますが、どうしよう、こうしようという具体的な話は出ておりま
せん。ただ、都中建の1月号会報に技能労働者不足の問題について寄稿しました。各団体でもこの問
題は深刻な状態を招いていますので、官民が一体となって考えていく必要があると思います。今、50
~60代の指導者が若い人に技術を伝承していくという環境にはなく、若手の育成が難しいのが現状で
す。以前に比べ給料も大分減っていますので、とくに若い人は入職しなくなっています。今の収入の
3倍くらいないと入職してきません。
今は道具、作業服、交通費、保険は全て自分持ちなので、一般サラリーマンの給与に比べて3分の1
くらいしかありません。最近の建設業界は¨汚い・きつい・危険¨の3Kプラス少K「少ない給料」
の4Kになっています。この4Kのイメージを払拭しない限り、若い人はまずこの業界に入ってくる
ことはありません。とくに「少ない給料」は何とかすべきです。
――大変、深刻な状態にあると思います。本当に官民が一体となって、抜本的な解決が必要だと思い
ます。
上之原 今、本気になってこの問題に取り組んでいかなければ7年後開催されるオリンピック競技施
設、首都の防災対策、インフラ整備等は出来なくなってしまいます。技術者は、高校や大学で知識を
身に付けてくるので、実際、現場に出ても、さほど心配はありませんが、技能者は3年くらい経験や
鍛錬を積まないと、現場に出て働くということは難しいかもしれません。若い人に経験や鍛錬を積ま
せた後に現場で働いて、世間並みの給料をもらう、という安定的な循環を作っていかなければ、本当
に行き詰ってしまいます。
――都中建では解決に向けての方向性は決まっているのですか?
上之原 若い人を育てなければならないという踏み込んだ話にはなっていませんが、都中建では会員
の要望を受け、2009年から外国人研修生の受け入れ事業を開始しています。東南アジアなど途上
国には、自国の経済発展と産業振興の担い手となる人材を育成する観点から、とくに青年層の働き手
に先進国の進んだ技術・技能や知識を習得させようとするニーズがあります。このニーズに応えるた
め、諸外国の青年層労働者を一定期間、日本の建設業界に受け入れて建築・土木の技術・知識を習得
させます。当協会が土木研修生を受け入れ、会員に紹介しています。
――この技能者不足問題が解決しないかぎり業界自体が疲弊してしまいますよね。
上之原 われわれ業界だけで解決できるような話ではありません。何とかしなければならないと思っ
ています。今はハウスメーカーも技能労働者不足が深刻な問題となっているようです。エレベーター
も製品はあるけど、半年先でないと取り付けられないといった状況に置かれています。エレベーター
だけでなく、サッシ、シャッターもそうです。基礎は出来ているのにそのままになっている現場は少
なくないのです。抜本的な解決策を早く見出さないと建設業界はニッチにもサッチにもいかなくなり
ます。オリンピック競技施設も影響が出るかもしれません。
【都中建会報1月号から】
上之原孝副会長
◇―若者に夢を――◇
最近の建設業は3Kプラス少K「少ない給与」となって4Kである。これでわ、若者の入職者が少
なくなるのはあたり前だと思う。特に技能労働者の育成が喫緊の最重要課題だと思っている。技術者
は、ある程度学校での教育で一応スタート、地点に立っているが、技能労働者は短期の技能養成所の
修業だけでは、まだ、まだスタート地点ではなく、そこからさらに3年、5年の厳しい修練を積んで
やっとスタート地点である。若者が入職し、安定した収入を得て生活できるようになるには、現状で
わとても難しいと思う。
東北の復興も、オリンピックの成功も若者の今後の活躍次第である。そのためには今から若者を育て、
活躍できる環境を今整備しなければいけない、指導者が元気な間に。そのためには、今の業界の4K
のうち1つだけでも解決してあげて、所得倍増を実現させたいと思う。
現在の年収300万を600万以上にするには建設業界だけではできない、しかし、やらなければ、
オリンピック、も国土の強靭化も、安全な環境の維持もできない。
災害時も、毎日の暮らしの中でも、地域の安全安心お守るのはその地域の中小の我々建設業界です。
肝心の我々の業界はここ数年の無謀な競争で疲弊しきって、若者を育てる余裕はありません。今後は
みんなで、この問題を真剣に考えていく重要な課題のひとつだと思う。