インタビュー

2014/02/20

中嶋正宏東京都オリンピック・パラリンピック準備局長インタビュー

◎中嶋正宏東京都オリンピック・パラリンピック準備局長インタビュー


2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備が始動する。東京都では、1月に設置されたオ

リンピック・パラリンピック準備局が中心となり、関係機関と連携して、大会の準備から運営まで中

心的な役割を担う東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会をサポートするとともに、

開催都市として、国立競技場を除く新規の競技施設を整備する役割等を担う。新都知事誕生で建設計

画が一気に進む可能性がある。大会開催後の東京を見据え、街のバリアフリー化や環境面・防災面等

からの都市づくりを計画的に行うなど、オリンピックを契機に東京はどこまで進化できるのか、同準

備局の中嶋正宏局長に現状と今後の課題について聞いた。


                 ◇


――2014年度予算案が公表され、オリンピック・パラリンピック準備局に総額101億円が計上

されました。6年後を見据えて選手村や競技施設整備がいよいよスタートしますが、まずはご感想か

らお聞かせください。

中嶋 2020年の開催に向けて、大規模な競技施設をいくつも整備しますので、責任の重さをひし

ひしと感じています。もちろん選手たちが最高の競技ができるような施設を着実に造ることが我々の

使命ですので、最大限の努力をしていきます。また、オリンピック・パラリンピック終了後は都民の

財産として残りますので、競技施設の運営形態も含めて、恒久的に使用できるよう施設のあり方を考

えていきたいと思っています。

 選手村はオリンピック・パラリンピック終了後に住宅地として残りますので、地元住民の方々と意

見交換をしながら、大会のレガシー(遺産)として、ふさわしい街づくりを計画していきたいと思って

います。

選手村の整備面積は約44?。急速に開発が進んでいるウォーターフロントの晴海ふ頭に位置するとこ

ろに整備します。大会の地理的な中心地であり、大会コンセプトの中心でもあります。居住ゾーンは

3街区に分けられます。大会後もレガシーとして残りますので、緑にあふれる開放的で魅力的な空間

になるよう都市計画を進めていきたいと考えています。


――新設するバレーボールや水泳など10競技9施設について、施設整備をスムーズに進めるための策

や手法についてお聞かせください。

中嶋 実質あと5年くらいで全部の競技施設を整備しなければなりません。基本設計、実施設計、着

工という本当にタイトなスケジュールですので、特に大規模な競技場については、デザインビルド

(DB=設計・施工一括発注方式)のような発注形態も考えており、すでに検討も行っています。ゼ

ネコンは最先端の技術を持っていますので、民間の知恵を拝借しながらこの難事業を乗り切っていけ

ればと思っています。


――選手村の設計や都市計画との関わり等について、どのような構想をお持ちなのか、お聞かせくだ

さい。

中嶋 選手村は、オリンピックというビッグなスポーツイベントを経て、一つの街として形成されま

す。従来の再開発事業とは違いますので、大会のレガシーとして残しながら、しかも国際的で、広域

生活拠点にふさわしい水と緑の豊かな自然環境と調和した街をめざしたいと考えています。まずオリ

ンピックを成功させたうえでの次の展開となりますので、地元住民の方々のご意見を十分に採り入れ

て、街づくりを進めていこうと思っています。


――地元住民の意見を十分に反映していく、ということですね。

中嶋 そうです。住民の方々には千差万別の考え方がお有りだと思いますので、それを集約してどう

いう方向で総合的な街づくりを進めていくのか、先にも言いましたが、選手村はレガシーとして残り

ますので、それにふさわしい街づくりをしたいと考えています。

昭和39年に開催された東京オリンピック・パラリンピック後の選手村は代々木公園として生まれ変わ

りました。原宿側は静かな森林公園、渋谷側は国立代々木競技場を中心としたレクリエーションの場

となっています。

今度の選手村は銀座に近接しているほか、未来への発展を印象づけるような施設や臨海都市のお台場

にも近接しています。街づくりに向けて大きなコンセプトが必要ですので、大会終了後は、地元住民

の意見を十分に採り入れて検討し、最高の街づくりをしていきたいと思っています。まずは選手村を

整備し、大会終了後は再開発をセットで考えていくべきだと思っております。

もちろん、どのようなスキームで街づくりをするのか、難しい問題ではありますが、そこに定住され

る方々がちゃんと生活できるよう商業施設、教育施設をどのように整備するか、何度も言うように選

手村はレガシーとして残るわけですから、とにかく魅力ある街づくりを考えていきたいと思っていま

す。


――都は国やスポーツ界と三位一体で事業運営を推し進めて行かれると思いますが、今後、どんな役

割を担って行こうと思っていますか。

中嶋 基本的には東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が大会の準備から運営まで

中心的な役割を担いますので、都は開催都市として競技施設を整備します。また、行政面や警視庁の

交通問題等もありますので、そういった調整の窓口も担当します。開催都市として組織委員会を全力

でサポートしようと思っています。

一方で競技施設は半永久的に残るわけですから、大会終了後の東京というものを見据えた都市づくり

を計画的に行っていきたいと思っています。街のバリアフリー化や環境的な観点からも街づくりを進

めていければと思います。大会後の東京をどう変え、変貌させていくのか、それが東京都の役割でも

あり使命だと思っています。

現在、都には4000億円の基金があります。新規の競技施設のうち、国立競技場を除く、9施設は、

東京都で建設しますので、今後はいろいろと情報発信をしていこうと思っています。オリンピック・

パラリンピック開催都市ですから、その役割は大きいですし、責任重大です。


――最後に局長にとって東京五輪とは何だと思われますか。

中嶋 オリンピック・パラリンピックは世界中の人が注目するビッグイベントですので、開催に向け

皆が頑張ることで、日本が1つになりますし、輪も広がります。大会終了後は交通や道路などのイン

フラ整備、耐震化を含めた防災面で東京を大きく変貌させようと思っています。オリンピック・パラ

リンピックの開催は大きなチャンスです。この機会を逃さず、どんどん活用していく。東京都だけで

なく日本全体でオリンピック・パラリンピックという世界最大のスポーツイベントをうまく活用して

いく。まさにそれが「未来をつかむ」ことになるのです。


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