国土交通省 由木住宅局長インタビュー
7月31日に国土交通省住宅局長に就任した由木文彦氏は、今後の住宅行政の大きな課題として「ストックと高齢化」の2点を挙げる。「住生活基本計画の5年に一度の見直しに入っているが、ストックは放っておいても空きがどんどん増える。高齢者は、団塊の世代がすべて75歳以上になるラスト10年。余力があるうちに取り組める最後の10年」と危機感を示す。
由木氏は「ストックについては、空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)が議員立法で成立するなど、国会レベルでも深刻に取り上げられている。旧耐震の建築物がまだ多く残っており、耐震化が無理なものは除却して、そうでないものは建て替えて質を高め、市場に流通するようにしたい」と方向性を示す。「今はいい循環になっていない。値が付かないのでリフォームしない。質を高めない。市場に出ない。結果として、空き家になる。何とか逆転させる施策を打たなければならない。1つボタンを押せばそうなるものではない。あらゆるところでその方向に持っていく努力をする」。
もう1つの課題である高齢化対策については、「首都圏を中心に高齢者の行き場がなくなるとも言われる。サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の取り組みを計画通り進めるほか、拠点となる施設の整備に対し、できるだけ支援策をつくっていく」。日本版のCCRC(=W)にも触れ、「都会から来る人を受け入れるための支援。例えばサ高住の基準を緩和するなどに、来年度の予算で取り組もうとしている。そういう動きをできるだけ支援したい」と強調する。
また、建築物の省エネ化については地場の工務店も含めた施工者の意識向上に取り組みたいと話す。大規模建築物の省エネ改善率は上がっているが、中小で進んでいない。「大きなものだけでは足元で進まない。地場の工務店も省エネへの意識を持って、改修だけじゃなく新築の時から省エネ性を満たすものが建てられるよう、講習会などを通して意識向上を進める」。
ゆき・ふみひこ
1960年10月生まれ。島根県出身。1983年東大法学部卒、建設省採用。大臣官房付(内閣参事官・内閣官房副長官補付ほか)、内閣官房審議官(内閣総務官室)、大臣官房総括審議官を経て2015年7月31日から現職。
W=CCRC
Continuing Care Retirement Communityの略。東京圏をはじめとする高齢者が、希望して地方に移り住み、健康でアクティブな生活を送ることができ、また必要に応じて介護などのケアを受け続けることができる地域づくり。