(財)建設業振興基金 内田理事長インタビュー
「建設業が困ることになるから若者を確保する」から、もう一歩前に進んでほしいと訴えるのは建設業振興基金の内田俊一理事長。多くの若者がフリーターになる中、「フリーターではスキルが上がらない。何のスキルも身につかない若者が増えていく。これは放置できない。大人たちの責任だ」と指摘、社会の課題を我々の力で解決するという意気込みが大切だと言う内田理事長に話を聞いた。
教育の場を離れ社会に出て行った若者の人数を示す表がある。内閣府作成のものを内田氏が整理しなおしたもの。高校、大学、専門学校などから100万人以上が社会に出ているが、早期離職などで合計60万人以上が職場を離れている。
建設業にとっては、定職についていない若者がこれだけいるというデータは、今後の若年者の確保を考えれば、入職する可能性を持つ若者が多くいる、という好ましいデータに見えるが、内田氏はこのデータに大きな課題がひそんでいると言う。
「定職についていない若者の多くがフリーターになっている。フリーターになるとスキルが上がらない」と一枚のグラフを示す。このグラフは、厚生労働省がまとめたものだが、これを見ると、正社員に比べ、契約社員、パートタイマーの研修が非常に少ないことがよく分かる。「少子化の状況下で、本来ならば『一騎当千』の若者が望まれているのに、フリーターになれば何の訓練もなく、スキルが上がらない。社会人としてのスキルが身についていない若者がどんどん増える」。これは日本の「人」のレベル全体の低下につながる。こうしたスキルを持たない若者がそのまま30代、40代になっていく。非常に大きな社会問題だと内田氏は指摘する。
これを他産業に先立って建設業が解決できるか、解決しようという意思を持てるかが鍵だと言う。今後、他産業と若者の取り合いになった時、「月給化や正社員化、訓練の実施。こうしたことに産業界の先頭に立って取り組んでいるかどうか」。将来の担い手確保はもちろん必要だが、「『若年者が入ってこないと建設業界が困る』から一歩前進し、こうした社会の課題を我々の力で解決するという強い意気込みが大切。意気込みがあって初めて振り向いてもらえる。結果として人も入ってくる」。建設業界が真に若者の受け皿となるには、今よりも高い志が必要と言える。