足立敏之氏インタビュー
元国土交通省技監で、来年の参議院選挙に自由民主党の公認を得て出馬する足立敏之氏。改正品確法の成立に尽力した脇雅史氏の「後継者」と見られる足立氏への建設業界からの期待は大きい。足立氏が建設業界の現状をどう見ているのか、また、その中で自身の役割をどのように考えているのかなどを聞いた。
―公共事業予算について
足立 アベノミクスで10兆円規模の補正が打たれたが、本来継続的に打たれないといけなかったのに、単年度で終わったきらいがある。(当初予算は)ここ3年は横ばいの予算が確保できているが、今年の工事の出かたを見ると大変厳しい状況にある。地域によっては(前年比で)4割減少しているところもある。年明けの国会で早々にも補正を成立させ、15カ年予算でトータルのボリュームを確保する必要がある。
当初予算は、少なくとも前年比1以上は確保し、加えて必要な補正を打っていくことが不可欠。再び奈落の底に落ちていくような予算だと、建設業界も先が見えなくなる。企業が人を雇うとか、設備投資、技術開発などができない。
―公共事業予算の必要性は
足立 日本の予算が半減している間、世界を見渡すと、イタリア、フランスは1・5倍、アメリカは2倍、イギリスは3倍になっている。イギリスの国土は、日本の3分の2なのに、高速道路延長は1万2000㎞。日本は1万キロ。同じ島国でこれでいいのか。日本は山がちでもっと地域と地域を丁寧に結ばなければいけないのに。
まだまだやらないといけないことがある。もともと3環状が終わったら次は何をするか考えていたはず。リニアも大阪までいったら終わりなのか。新幹線もこれでもういいのか。高速道路もきれぎれの状態で本当にいいのか。日本の発展を考えたらここで終わりではないはず。
維持管理を考えても今の水準では足りない。今年の災害を見てもそう思う。やらなきゃいけないことがいっぱいあるのに、補正で予算をつけるとばらまきと批判される。例えば、地方の舗装もひどい。パッチワーク的に補修しているだけ。みっともない日本になっている。地方に行くと余計に予算が必要だと思う。
―建設業の担い手確保については
足立 担い手が入る環境づくりが不可欠。若者がこの産業に一生身を置きたいと思うような環境。給料や休暇だけではなく、「やりたい」と思うプロジェクトがちゃんとあること。夢がないところに人は来ない。予算を入れて、担い手確保とあわせてそういうこともやらなければならない。
私が土木を選んだのも、願書を出しに行く日に、ちょうど関門橋のことをテレビ中継していて、ゼネコンの社員の人が嬉しそうに橋の説明をしていたのを見たのがきっかけ。私の先輩の世代だと「黒部の太陽」の影響だったり、輝かしい日本を発展させる原動力になっていたプロジェクトがあった。
今、国土のグランドデザインや国土形成計画が議論されていて、国土強靭化法もできて、チャンスはきている。これをどう生かすか。建設産業だけじゃなく、地域の皆さんとしっかりネットワークして、プロジェクトにしていくことが大事。
―建設業が今後発展するために必要なものは
足立 受注者の適正な利潤を確保という素晴らしい文言が入った品確法を徹底すること。もう1つは、国民に信頼される品質のものをしっかり提供すること。これはゆずってはいけない。そこを守った上で、産業の発展を考えなければならない。
―ご自身の今後の役割は
足立 公共事業の必要性、インフラ整備の重要性を国政で訴え続けること。もう1つは、改正品確法を魂の入ったものにすること。これは徹底する。私のライフワークになってくると思う。
また全国を回って、地方をよく知って、地域で経験したこと、地域のニーズをしっかり伝えていくことも大切だと思っている。地域の代弁者、代表者にならなければと思っている。