国土交通省 石井啓一大臣新春インタビュー「生産性革命「前進の年」に」
石井啓一国土交通大臣は建設専門紙の共同インタビューで、中長期的な担い手の確保・育成に向けた処遇改善や施工時期の平準化などの取り組み、ストック効果を重視した社会資本整備を計画的に進めるための安定的・持続的な公共投資の確保、無電柱化の推進などに力を入れる見通しを語った。また、生産性革命については本年を生産性革命「前進の年」に位置付けて、昨年選定した先進的なプロジェクトの具体化に意欲を示した。
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―建設産業の中長期的な展望について
石井 建設業界は人手不足が大きな課題であり、中長期的な担い手の確保・育成が重要となる。国土交通省としては業界等とも連携を図りつつ適切な賃金水準の確保や社会保険の加入促進などの処遇改善、休日確保といった働きやすい職場づくり、教育訓練の充実、施工時期の平準化などに取り組んでいる。
具体的には過去4度にわたり設計労務単価を引き上げるとともに、この設計労務単価が現場の技術者・技能者の賃金水準に的確に反映されるよう適切な賃金水準の確保を建設業団体にもお願いしている。また、5年前から業界とともに進めてきた社会保険未加入対策の集大成の年でもあるので、業界全体に社会保険の加入が定着するよう全力で取り組みたい。
施工時期の平準化については2017年度の政府予算案で適正な工期を確保するため、2カ年国債を16年度から倍増して約1500億円確保しており、当初予算では初めてのゼロ国債を約1400億円盛り込んでいる。補正予算でゼロ国債を盛り込むと、やはり年度の後半になるため発注までの準備期間が取れないが、年度当初に計上しておけば、しっかりと期間を確保した上で計画的な発注が進み、より施工の平準化に有効に使うことができる。平準化の取り組みとしては画期的であると自負している。さらに国や地方自治体の発注見通しを統合して公表することと併せて、さらなる平準化に向けた取り組みを進めていきたい。
技能労働者が適正な評価と処遇を受けられるように建設キャリアアップシステムは本年秋の稼動に向けて取り組んでいく。
また、将来の担い手確保や生産性向上などの課題に真正面から取り組んでいくために建設業関連制度の基本的な枠組みも見直す必要がある。建設産業が10年後においても生産性を高めながら現場力を維持できるように、建設産業政策会議で官民が一体となって総力を挙げて担い手の確保・育成をはじめとした建設業の将来を見据えた取り組みを進めていきたい。
―17年度予算案を受けた今後の社会資本整備の方向性について
石井 これからの社会資本整備においては、民間投資の誘発や複数事業を一体的に実施する「賢く投資」する取り組み、施設の利用効率を向上させる「賢く使う」取り組みを徹底することでストック効果の最大化を図っていく。また、ストック効果を重視した社会資本整備を計画的に進めるためには安定的・持続的な公共投資の確保が何より重要と考えている。17年度の国土交通省関係予算案で公共事業費は前年度を20億円上回る5兆1807億円を確保した。今後とも真に必要な事業に重点的かつ計画的に取り組んでいきたい。
―生産性革命元年の総括と17年の展望は
石井 昨年は生産性革命元年と位置付けて国土交通省生産性革命本部を設置し、生産性向上につながる取り組みの先進事例として20のプロジェクトを選定した。今後は選定プロジェクトのさらなる具体化を進めるとともに、生産性革命の考え方を国土交通省の施策全般に組み込むために、本年は生産性革命「前進の年」としたい。
―無電柱化の推進について
石井 わが国で無電柱化がなかなか進まない主な要因はコストが高いこと。国土交通省では関係者と連携してケーブルを直接埋設するなど低コスト手法の導入に向けて取り組んでいる。昨年12月9日に議員立法で無電柱化の推進に関する法律が成立し、期待が高まっている。まずは有識者から幅広く意見をいただいた上で、法律に規定された無電柱化推進計画の策定に取り組みたい。