土木学会 大石久和新会長インタビュー「土木が危機」
「土木は、いま危機にある」。土木学会の新会長就任インタビューで。大石久和氏が開口一番発した。
「土木が国民の皆さんに理解されていない。土木の学問的な成果、設計に関する技術・研究が国民の皆さんに還元できていない。インフラ整備はこの20年、世界の先進国は2倍、3倍と伸びしてきたのに対し、わが国だけが半減以下というレベルまで削減。結果として財政は改善せず、貧困化が進んでいる」と状況を説明した。
「これはインフラ整備が私たちの生活を支えているという認識の欠如によるもの。土木学会が暮らしとの近さを実感していただくよう努力しなければならない」と方針を示し「オリンピック開催による経済効果などは話題になる。しかし新幹線や高速道路などどれだけ経済に貢献してきたか。数年~数十年かけてストックされるものだが、それを証明するような経済学もない」と吐露した。
そのための打開策として「3つのプロジェクトを立ち上げる。ひとつは土木を把握するための勉強会。安寧の公共学懇談会で議論を進めている。例えば大学の講義に土木概論を取り入れたい。二つめはレジリエンスの確保に関する技術検討委員会。この道路が何のために作り、生活にどのように関係するか等の説明が必要なので。三つめは国土とインフラの維持・管理・更新に対するガイドラインの策定。人や予算が減る中で、進んでいる技術分野を次の世代に残すべくレールを敷かねばならない」と語った。
【略歴】
おおいし・ひさかず
1945年4月うまれ。1970年京都大学大学院工学研究科卒業後、建設省入省。1999年建設省道路局長、2002年国土交通省技監を経て、2016年全日本建設技術協会会長、2017年土木学会会長に就任。