(社)日本建築士事務所協会連合会 日事連・佐々木宏幸会長インタビュー「業務環境改善に全力」
6月26日に行われた定時総会で日本建築士事務所協会連合会(日事連)の新会長に就任した佐々木宏幸氏(栃木県建築士事務所協会会長、AIS総合設計代表取締役社長)は、全国の建築士事務所のために協会運営を行う必要があるとの考えを示す。佐々木新会長に今後の運営方針や課題などを聞いた。
―協会の運営方針や重点課題について
佐々木 第一に各会員の健全な運営を支援すること。さらに働き方改革など建設業界はまさに転換期にあり、BIMなどの新しい技術の中でわれわれの業環境が変わってきている。加えて人口減少などでストックの時代に対応していく必要がある。建築士事務所の業の団体として日事連があるので、建築設計業の在り方や従来の姿、生産性の向上や人材確保そして報酬の引き上げなど業務環境を改善していくことを全国の建築士事務所のために行っていきたい。建築士あるいは建築士事務所ができないこと、手が出ないところを団体活動で手助けする。常に建築の質の向上が目的で建築士のために常に動く団体だと考えている。
―働き方改革について
佐々木 3年前から業務環境改善ワーキンググループを発足して業務環境の改善に取り組んできた。その中において2020年に向けてロードマップを作成していく。ただし日事連から働き方改革を押し付けるものではない。ワーク・ライフ・バランスを実現するための行動計画として一つの指針にしてもらいたい。
―BIMの今後の取り組みについて
佐々木 BIMの広がりは予想より遅いのではないのか。なんらかの方法で普及を促進していかなければならない。BIMで全て連動できるのかというところを考えていかないと100%の普及とならないのではないか。そうした議論を行う場としてワーキンググループを立ち上げ1年ぐらいでまとめたい。BIMは事前に出来上がりを見ることができるし、熱や風などの環境も分かるので普及した方が消費者にとっては明らかにメリットがある。
―新設される法制度対応特別委員会と災害対策委員会の役割は
佐々木 災害が起こった後に特別委員会がいろいろと決めていたが、災害に対して常に考えておく必要があると考え、災害対策委員会を立ち上げた。また法制度対応委員会では建築関係の法律以外にも常に改正されていく法に対して日事連としてどう向き合えばいいかを考えていく。
―建築士資格制度改正の要望を設計3会で共同提案したが
佐々木 議員立法で通ったからといってすぐに試験に取り入れられるわけではない。一刻も早く制度改正を進めてもらいたい。
―地方の建築士事務所について
佐々木 東京の場合はオリンピックまで建設ラッシュだが地方はそうはいかない。仕事が一極集中しているし、東京と地方では考え方や仕事の進め方が違う。地方の苦しい事情は分かっている。国土交通省の委員会などで地方の事情を取り入れてもらいたい。会長として活動する中で地方というものを真剣に考えて進めていくことができると考えている。
―関係団体へのメッセージを
佐々木 建築を扱っている5会は全て立場が違うが、その中で各会が情報共有して考え方をぶつけ合うことが必要。特に設計3会は情報を密に共有していく必要がある。今までは何かあると集まって話をしていたが、今後は定期的に話し合いを行い、考え方や問題点をぶつけ合っていくことを提案したい。
【略歴】ささき・ひろゆき
1992年3月東京電機大学工学部建築学科卒。同年、新井設計(現AIS総合設計)入社。96年代表取締役社長に就任。2012年栃木県建築士事務所協会会長、16年から日事連副会長を経て6月の総会で会長に就任。57年生まれ。千葉県出身。