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国土交通省下館河川事務所

国交省下館河川事務所が水のう工法の試験施工

2016/09/22 日本工業経済新聞(茨城版)

 昨年9月の関東・東北豪雨災害を踏まえ、社会全体で洪水に備える「水防災意識社会」を再構築する取り組みが全国で進められている。現在、国が模範を示す形で直轄河川ごとに、国、県、沿川自治体などで構成する減災対策協議会を設置。減災のための目標や、これを達成するための取組方針を策定したところ。今後、これに基づきハード対策はもちろん、ソフト対策も一体的に推進していくことで、洪水が発生した場合でも被害を最小限にとどめることを目指していく。この取り組みの一つとして注目されているのが新技術を活用した水防活動だ。

 国土交通省下館河川事務所(里村真吾所長)は15日、取手市中内地内の小貝川沿岸で「水のう工法」の試験施工を実施した。同事務所の藤代管内維持管理工事の受注者である新井土木㈱(常総市)が施工し、周辺自治体の取手市や龍ケ崎市の防災担当者のほか、筑波大学で河川環境工学を教える白川直樹准教授が見学した。

 冒頭のあいさつで里村所長は、「水のうは短時間で多くの面積を防ぐことができる新工法。きょうは原寸大の橋梁部分を再現して実験する。しっかりと記録を取り、市町村と共有し、他の地域にも発信していきたい」と述べた。

 水のう工法は、軽く強靱なポリエステル製のチューブに水を入れ、ピラミッド状に積み重ねて堤防からの越水を防止するもの。従来の土のう工法と比べ、人員と作業時間を大幅に削減できる。

 今回はJR常磐線の小貝川橋梁の左岸部をモデルとし、幅25mの鉄道橋の越水防止工事を想定。新井土木の作業員約10人が散水車やエンジンポンプを使い川の水をチューブに注入し、3段、高さ1・2mを積み上げ、1mの浸水を防いだ。所要時間は約2時間20分で、同規模の土のう工法の約半分で済んだ。

 今回、現場代理人を務めた新井土木の松﨑和志氏は、「鬼怒川の氾濫のとき、この水のうがあれば」と振り返り、「訓練を繰り返せば、もっと早く施工できるはず」と話した。

 下館河川事務所は今後、水のうを導入し、設置訓練を行う周辺自治体に貸し出す考えだ。


【①里村所長②チューブに水を入れて迅速に積み上げていった】

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