県による総合球技場の建設場所の選定が、最終段階に来ている。18日と19日には、甲府市内の候補地2カ所(リニア駅前、小瀬スポーツ公園周辺)の地元である大里地区と山城地区で住民説明会を開催し、両候補地の検討結果を説明し、意見を聞いた。県では今月中に建設地を決定する。
県が想定している候補地は、リニア駅前は駅南の駅正面、小瀬は公園南東側の第3駐車場。
建設場所の選定にあたっては、「立地」「整備・運営」「機能」の視点から検討を行った。検討にあたっては、基本構想策定業務を委託した日本総合研究所の見解を参考にした。
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候補地2カ所の機能ごとの検討結果は次のとおり。
【アクセス利便性】
・リニアを利用する県外からの来場者は、リニア駅前が利便性が高い。しかし、リニア駅と小瀬スポーツ公園間の所要時間は、新山梨環状道路東部区間が供用すると現在の15分程度から5分程度となり、自動車の利便性の差異はほとんどない。
【具体的な配置場所】
総合球技場検討委員会の報告書(2016年12月)に基づき、前提条件として、収容人員2万人規模とし、設計事務所の意見を踏まえ、施設本体の大きさを南北190m、東西150m、高さ25mに設定した。
◆リニア駅前
・駅舎正面の南北約240m、東西約170mの区画に配置する。その場合、駅前南口広場への進入路は、交通安全や道路構造などから鎌田川の鳴子橋東詰から約190mの位置となる。さらに、新山梨環状道路の高架を考慮すると約10mのセットバックが必要になる。
・これらにより総合球技場は、駅前のメーン道路と進入路の間で、駅舎と新環状道路の間となる。
・この配置の場合、配置区画の余裕幅が北側30m、南側20m、東側と西側は各10m程度しかない。
・近接する駅舎の工事と施工時期が重なる場合、関係事業者と協議が必要になる。
・報告書を踏まえると、リニア環境未来都市整備方針で提示した駅南側の観光交流・産業振興エリア以外に1500台分の駐車場が必要になる。また、観光交流・産業振興エリアとして十分な機能を実現させる際の制約が強まる。
◆小瀬公園周辺
・建設予定の新環状道路東部区間や人家の連 状況を考慮すると、公園南側の第3駐車場が適地となる。この場合、用地取得が必要になる。さらに、建設場所の第3駐車場の代替駐車場を整備する必要がある。
・新環状道路は県施行のため、近接工事となった場合で
も施工時期の調整は可能になる。
【施設整備】
前提条件として、用地取得の単価の比率を、近隣の取引事例などから、リニア駅前を小瀬の1・3倍とする。
◆リニア駅前
・スポーツ振興くじ助成金の活用が可能。しかし、助成の上限は全国で総額30億円であり、優先配分を受ける工夫が必要。
・駐車場用地は約4万5000㎡(1台約30㎡×1500台)。小瀬は約3万3000㎡で、全部を買収する場合、取得単価は小瀬の約1・8倍が想定される。
◆小瀬公園周辺
・国庫補助金(社会資本整備総合交付金)の活用が可能。スポーツ振興くじ助成金の活用も可能だが、都市公園でない施設との競合がある場合は不利となる見込み。
・新たな用地取得が約3万3000㎡必要となる。内訳は、球技場の不足分約8000㎡+第3駐車場代替分約2万5000㎡。
【運営(ネーミングライツ)】
・リニア開業後は、リニア駅前はマスメディアへの露出が高まることが想定され、ネーミングライツの契約が高まる可能性がある。
【集客力】
・県外からの集客力はリニア駅前の方が高い。ただし、来場者は自動車利用の割合が高いことを考慮すると、両候補地の差異は少ないと想定される。
【施設運営費】
・リニア駅前は駅前の他施設と、小瀬公園周辺は公園の既存施設と、それぞれ一体的な管理により効率化が可能であるが、具体的な整備内容が決まっていないため、両候補地の比較は困難である。
【防災機能】
・リニア駅前はリニア利用者の避難場所として、小瀬公園周辺は県の主要防災活動拠点となっているため、両候補地とも、防災力の向上に資することが期待できる。
【経済波及効果】
・施設の設計が未実施で、施設整備費や維持管理費が試算できないため、両候補地の比較が困難である。
【図=リニア駅前の場合、小瀬周辺の場合】