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山梨県甲斐市

緑化センター跡地活用でプロポ要項作成へ 地元説明会も開催

2018/06/22 山梨建設新聞

 県緑化センター跡地にフラワーパークや美術館の整備を検討している甲斐市は、今後の事業の見通しを明らかにした。本年度中に地元説明会を開き事業への理解を求めるとともに事業者選定に向けた準備を始める。選定は公募型プロポーザルで行う予定で、その募集要綱作成の経費を補正予算案に盛り込む可能性がある。市はこれまで通り市民や市議、県関係者らの意見を聞きながら慎重に計画を進める考えだ。

 センター廃止から4年余り。跡地約2万1000㎡の活用計画が具体化してきた。廃止時には市民から反対の声もあった事案。まずはその動向に注目する市民団体や自治会にこれまでの経緯や今後の事業の方向性を説明する。原案としてまとめたフラワーパークと美術館。その選定理由や施設概要、整備・運営・管理を民間と連携して行う「PPP手法」を導入する方針などを説明し事業への理解を求める。

 保坂武市長は6月定例市議会で、同跡地にフラワーパークと美術館を軸とした施設を整備する考えをあらためて示した。事業者選定は参加業者から事業計画や運営方法、資金調達などについて提案を受ける、公募型プロポーザル方式で実施。整備に3年程度、設計・施工・管理を含めた市の年間負担額は1億2700万円を見込む。事業者との契約期間は20年程度を見込んでいることも明らかにし、今後は「事業者公募に向けた業務を進める」と計画の具現化に踏み出す姿勢を示した。

 市は初めてPPP事業を実施するにあたり、事業者公募の要項についてコンサル業者にアドバイスを求める方針。地元説明会や市議らからの意見にもよるが本年度の補正予算案にその経費を計上する可能性がある。建設工事を担う企業との契約形態は今後決めていくことになるが、市はいずれ地元企業の活用を要項に盛り込む方針だ。

 センター廃止から約2年後の2016年1月、県は市に跡地活用の意思を確認した。市はいったんは断ったものの県による活用予定はないとのことから取得・活用を決めた。市は活用の方向性を決めるにあたり、市民や市職員のアイデアを参考に集客性や収益性、跡地活用に至った経緯などを踏まえ検討を重ねた。「負の遺産」とならぬよう経営ノウハウにたけた民間事業者と手を組む方向で事業メニューを模索した。

 地元からは「緑を残してほしい」という強い要望があったため、市は既存施設の機能・役割を継承した活用策を検討した。市民らのアイデアで出たのは◇植物園◇図書館◇博物館◇美術館◇郷土館◇体育施設◇福祉施設など。この中から、既存の計画に沿いすでに整備を進めている公園や学校施設、既存施設の類似施設、調査で民間の参入がしにくいと判断された施設を候補からはずし方向性を絞った。

 不動産ディベロッパーなど民間事業者にも聞き取り調査を行った。また昨年度は日本総合研究所に依頼し、事業の基本計画案を作成した。同研究所には◇事業の背景◇立地特性◇市のまちづくり計画◇市民からのアイデア◇集客性・収益性を踏まえた立案を求めた。その結果、施設単体では難しいとの判断に至り、フラワーパークと美術館を併設する計画案を固めた。美術館にはバラを描いた作品で知られる植物画家、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテの作品を展示する予定。市によると、15年11月に県立美術館で開かれたルドゥーテの展覧会には期間中延べ約2万人の来場があった。

 6月市議会では施設整備による市の将来的な財政悪化を懸念する声もあった。保坂市長は「施設をそのまま引き継ぎ、従前通りの手法で運営するだけでは県と同様に負の財産となりうる。人口が減少していく中、行政が新たなものに向かっていかないとならない」と新たな市のシンボルを整備する意義を語った。

 市担当者は「この施設だけで黒字化するのが難しいことは分かっている。だが既存の観光施設と連携することで相乗効果は絶対生まれる。外国からの観光客が県立美術館までくれば、甲斐市のミュージアムにも必ず寄ってくれる」と広く地元の活性化に寄与する施設になると強調した。

 


【写真=活用策が注目される緑化センター跡地】

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