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工法見直し来年度着工/ソイルセメント流動タイプで/横湯川砂防堰堤

2018/08/31 長野建設新聞

 県は2019年度、横湯川火山砂防事業(山ノ内町落合)の本堤工の再開を予定している。11年度の着工当初はコンクリートによる不透過型で計画していたが、堰堤形式を透過型、工法を砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)に変更。施工者は改めて選定し直す。完成目標は22年度で、19年度以降の残事業費は5億円。

 同事業は県内有数の観光地である湯田中渋温泉郷や野猿公苑などを土石流被害から守る目的で11年度に採択された。11~13年度にかけて工事用道路の整備や堰堤の基礎地盤改良、堰堤左岸の法面対策などを実施。北信土建(長野市)の施工で本堤工にも着手したが、工事用道路が急峻なため運転者の安全確保の観点から生コンの搬入が困難となり、工事中止に至った。

 その後、事業手法を再検討し、工法については現地発生材を利用する「砂防ソイルセメント工法」に見直すとともに、近年の流木災害による被害の甚大性を踏まえ、堰堤形式を透過型に変更する方針を固めた。堰堤の規模は延長89m(当初は95m)、高さ14.5m(当初と同じ)。設計はオリエンタルコンサルタンツが策定した。

 砂防ソイルセメント工法は材料を転圧機械で締め固める「転圧タイプ」と材料に流動性を持たせた「流動タイプ」に分類される。現場は大礫が多く転圧タイプによる施工が困難なことから流動タイプを採用。特殊な攪拌機械による施工が特徴で、転圧が難しい土砂にも適用できるメリットがある。同タイプはこれまで、緊急時の基礎処理としての実績や堰堤本体の一部に使用された事例はあるが、本体全部を施工した事例はないため、試験施工を実施。現場への適用性を確認している。

 見直しにより事業期間は当初予定から2年間延長し、22年度までとした。総事業費は当初の7億6000万円から9億8600万円に2億2600万円増加。内訳は工事用道路の整備(路肩・舗装・落石対策等)が9500万円、堰堤左岸法面の対策(強風化岩の崩落防止対策)が1億円、設計の見直し(施工方法および堰堤設計の見直し)が3100万円。本年度は2000万円の事業費で工事用道路の整備(覆式落石防護網工L40m、A800㎡)を予定しており、現在入札手続き中(開札日は9月3日)。

 見直し案は本年度の県公共事業評価監視委員会の審議対象となっており、年内一杯かけて審議し、この答申を踏まえ来年1月に対応方針を決定する。

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