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(研)日本原子力研究開発機構

JMTRを解体撤去/廃止費費用は181億円

2019/09/26 日本工業経済新聞(茨城版)

 日本原子力研究開発機構は、大洗研究所(大洗町)の「JMTR」(材料試験炉)の廃止措置(解体撤去)を行うため、原子力規制委員会に計画認可を申請した。廃止対象施設は原子炉本体、核燃料貯蔵施設、原子炉冷却系統施設など。計画では廃止措置は4期に分け、2027年度までの第1段階では原子炉機能の停止や放射能管理区域以外の設備の解体撤去に着手。第2段階から管理区域内の設備を解体撤去を進める。廃止措置の完了予定は39年度。廃止措置費用(見積もり)は施設解体費約100億円、廃棄物処理処分費約81億円の合計約181億円(端数処理のため合計は一致しない)。


 JMTR(Japan Materials Testing Reactor)は1965年に建設を開始。68年の初臨界以降、発電用燃料や材料の照射試験などに利用された。2006年に運転を終了し、改修を行って再稼働を目指していたが、耐震補強などに多額の費用と年数が掛かるため廃止し、解体撤去を計画した。

 解体撤去は4段階に分けて実施する。

 第1段階(27年度まで)では、解体準備段階として原子炉の機能停止、核燃料物質の譲り渡し、汚染状況の調査、放射性廃棄物の処理・引き渡し、管理区域外の設備の解体撤去を行う。

 原子炉機能の停止では、制御棒の取り外し、制御棒のカナル内保管、制御棒駆動装置の電源ケーブル切り離しを実施。

 管理区域外の設備の解体撤去では、原子炉建家との境界の非管理区域側で二次冷却系配管の切断、切断に伴う開口部の閉止処置を行う。

 第2段階では原子炉周辺設備の解体撤去を推進する。原子炉本体以外の管理区域内設備の解体撤去に着手。核燃料物質などによる汚染の除去も行う。

 第3段階は、比較的放射能レベルが高い原子炉本体などの解体撤去を実施する。第3段階以前に着手した設備等の解体撤去も継続する。

 第4段階では、管理区域外設備の解体撤去、汚染の除去、放射性廃棄物の処理・引き渡しを継続するとともに、原子炉周辺設備や原子炉本体等の解体撤去後、建家内面のはつり作業を行い、汚染がないことを確認して管理区域を順次、解除する。

 管理区域を設定している建物で廃止後に一般施設として利用する施設や、管理区域を設定していない建物は継続して一般施設として利用するため、建物の解体は行わない。

 廃止措置に当たっては、安全の確保を最優先に放射線被ばく線量および放射性廃棄物発生量の低減に努め、保安に必要な機能を維持管理しつつ着実に進める。

 使用済燃料は搬出までの間、カナルおよびSFCプールで貯蔵し、原子炉運転段階と同様の管理を行う。新燃料要素およびJMTRC(プール型臨界実験装置)で使用した燃料は、JMTR原子炉施設から搬出までの期間、燃料管理室内の新燃料貯蔵設備に貯蔵し、原子炉運転段階と同様の管理を行う。

 使用済燃料およびJMTRCで使用した燃料は輸送容器に収納し、計画的に米国エネルギー省に譲り渡す。新燃料要素は国内外の許可を有する事業者へ譲り渡す。

 JMTRの炉形式は軽水減速冷却タンク型。熱出力は5万KW。原子炉容器から燃料は全て取り出されており、制御棒(ボックス型ハフニウム)は全挿入の状態で停止している。設備や建家の一部が放射性物質に汚染されており、放射性固体廃棄物の推定発生量は約5540t。ほかに放射性廃棄物ではない廃棄物は約5220tと推定している。

    ◇

 JMTRの廃止措置対象施設は次のとおり。

 ◆原子炉本体=炉心(炉心要素、炉心構造物)、燃料体(譲り渡すため解体はしない)、原子炉容器、放射線遮蔽体(炉プール、炉プール側壁)

 ◆核燃料物質の取扱施設および貯蔵施設=核燃料物質取扱設備(燃料取扱具、ラック台車)、核燃料物質貯蔵設備(新燃料貯蔵ラック、カナル№1、カナル№2、SFCプール、炉プール、CFプール、使用済燃料ラック)

 ◆原子炉冷却系統施設=一次冷却設備(熱交換器、主循環ポンプ、緊急ポンプ、配管および弁、脱気タンク、移送ポンプ、イオン交換塔、充填ポンプ)、二次冷却設備(冷却塔、循環ポンプ、補助ポンプ、水処理設備)、非常用冷却設備(主循環ポンプ、緊急ポンプ、補助ポンプ、サイフォンブレーク弁、炉プール連通弁、漏えい水再循環設備)、その他の主要な事項(UCL系循環ポンプ・揚水ポンプ・高架水槽・冷却塔、プールカナル循環系統循環ポンプ・熱交換器・イオン交換塔)

 ◆計測制御系統施設=計装(核計装、その他)、安全保護回路、制御設備、非常用制御設備

 ◆放射性廃棄物の廃棄施設=気体廃棄物の廃棄設備、液体廃棄物の廃棄設備

 ◆放射線管理施設=屋内管理用の主要な設備(エリアモニタ、水モニタ、ガスモニタ、ダストモニタ)、屋外管理用の主要な設備(排気モニタ、排水モニタ)

 ◆原子炉格納施設=原子炉建家(管理区域除外までとし、建物は解体しない)

 ◆その他原子炉の附属施設=非常用電源設備(ディーゼル発電機、蓄電池)、主要な実験設備(キャプセル照射装置、水力ラビット照射装置、ループ照射装置)

 ◆共通施設=除染施設、廃液輸送管、モニタリングポスト装置(他の原子力施設の共通施設として利用するため解体対象とはしない)



【図=JMTR鳥瞰図】

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