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【高力ボルト】市場混乱は沈静化に/発注様式が功を奏す

2019/11/20 本社配信

 高力ボルトの不足を受けて、国土交通省が需要安定化に向けて標準的な「発注様式」を作成、関係者に活用徹底を要請するなどの対策を進めたこともあり、一時期の市場の混乱が沈静化しつつあることが分かった。高力ボルトを使用した2016年度から18年度の工事を対象として、7月に行った鉄骨需要量と高力ボルトの需要量に関する実態調査の結果、鉄骨に対するボルトの使用量に大きな変化はなく、鉄骨需要量(推定)も近年は横ばいで推移していることが判明。高力ボルトの需給ひっ迫の要因は、実需の増加ではなく、「市場の混乱に基づく仮需要の一時的な増加によるもの」と推定した。

 また10月28日から11月1日にかけて実施した、第3回高力ボルト需給動向等に関するアンケート調査結果によると、10月の時点で納期は前回調査時の6・0~7・8カ月から4・7~6・5カ月に短縮され、需給動向は「ひっ迫」から「ややひっ迫」に改善した。

 発注様式は需要側・供給側共に60~70%の業者が活用している。供給側では大手ボルトメーカー3社は全て、問屋・商社は約60%が発注様式に基づいた発注情報を確認し、需要側は約70%の業者が発注様式に必要となる発注情報を供給側に提供していると回答した。

 ボルトの種類の違いによる納期の状況は「六角高力ボルト」や「トルシア形高力ボルト」などの一般的な高力ボルトと比較して、「溶融亜鉛めっき高力ボルト」「防錆処理高力ボルト」といった特殊なものは納期が長く、依然ひっ迫傾向にある。

 高力ボルトの需要安定化に向けたボトルメーカー、鉄骨ファブリケータ―、建設業団体等関係者、関係省庁による10月の意見交換会では、現況について「一時期より納期が短くなったが、通常の納期よりはまだ長い状況」「新規の注文は、ほぼ全て発注様式での注文になった。既往の注文は現在、発注様式へ変更している」との声があった。発注様式使用の効果では「不確定要素の高い注文が大幅に減った」「予定と詳細が段階的に提示されることから、計画的な生産が可能となった」という指摘が出ている。課題としては注文どおりに生産したものの半年以上引き取りに来ない場合など長期間出荷ができず「滞留在庫」となり、新規生産に影響が出ることが挙がった。

 国交省では需要動向が緩和し、標準的な発注様式の活用効果が認められる一方、30~40%の業者が発注様式を活用していないことから、19日付で▽全国建設業協会▽全国中小建設業協会▽建設産業専門団体連合会▽日本橋梁建設協会▽プレハブ建築協会▽日本建設業経営協会▽日本建設業連合会▽鉄骨建設業協会▽全国鐵構工業協会の9団体へ、対策徹底に向けた協力要請の文書を出した。

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