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新型コロナの脅威-対峙する建設業-上編

2020/03/09 埼玉建設新聞

 世界保健機関(WHO)は2月28日、世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスに関する危険度を、最高レベル「非常に高い」に引き上げた。県内では5日時点で6人の陽性を確認している。収束の糸口がいまだ見えない新型肺炎の脅威は、建設業界にも及び始めた。熊本県と千葉県では建設現場の従事者が感染し、国土交通省は各地方整備局などに徹底対応を通知した。加えて、建設資材の調達や病床確保といった課題も浮かび上がってきた。日本の建設業は何ができるのか。現状と将来的な可能性を探り、上下2回で緊急連載する。


国 工期適正化を指示/待たれる次の対応策


 国交省は熊本県と千葉県の建設現場で感染を確認。各都道府県や各政令指定都市などに、工事などの一時中止や工期の適正化を求めている。通知を受けた県とさいたま市は、進行案件の全受注者に工期延期希望に関する意向確認を実施。4日時点で県は28件、さいたま市が10件の希望を確認した。県・市は国の方針に従い、15日までの延期を認める方針だ。

 同日以降の対応は決まっていない。担当者は「国から方針が示されれば、対応したい」と述べるに留めた。県・市は独自の対応施策を打ち出すことができないのだろうか。延長期限まで残り少ないが、感染の勢いは衰えていない。仮に感染が広がるとすれば、施策の遅れは致命傷になりかねない。建設現場へのしわ寄せを防ぐため、延期に加え、補償を含めた次なる対応策が待たれる。


輸入建材に影響も/一部は国内生産へ


 取材を進める中で自治体の担当者から「トイレ改修で使う洋便器に影響があるのではないか」と質問を受けた。新型コロナウイルスの発生地・中華人民共和国に生産工場を構える企業が一部操業を見送り、建材調達がままならないからだ。職員は「20年度予算に計上したが、最悪の場合は繰越明許も視野に入れなくては」と肩を落とした。

 日本建築材料協会の担当者は「一部のメーカーによると、製品の製造に影響が及んでいると聞いた。国内生産へ徐々に切り替えて対応しているようだ」と明かす。証言を裏付けるようにトイレ製品を扱うTOTOは2月18日、協力会社からの部品供給に遅延が生じていることを公表。ウォシュレットなどの生産に遅れなどの影響が出てくる可能性を示した。

(下編につづく)


写真=県対策本部を置く危機管理防災センター

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