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国土交通省関東地方整備局(建設)

関東整備局の菱田晃統括防災官インタビュー

2020/06/15 埼玉建設新聞

”備えは十分でない”/平時からの準備が大切


 『備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは、十分ではなかった』これは東北地方整備局が東日本大震災の実体験をまとめた書籍『災害初動期指揮心得』の冒頭の文章。4月1日付で統括防災官(部長級)に就任した菱田晃(ひしだ・あきら)氏が建設専門紙の合同インタビューで抱負として示し「この言葉を肝に銘じて業務に取り組もうと考えています」と続けた。災害の業務は事が起きてしまうとバタバタする「去年の台風による洪水もそうですけど、それまでもTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)およびリエゾン(情報連絡員)派遣などで自治体を支援してきましたが、求められた内容は複雑多岐なものでした。今までは対応してこなかった事にまで対応せざるおえなくなりました」とし、さらに続けて「平時から準備が大切で、実際に起きてからでは間に合いません。想像以上の事が起きたり求められたりします」と語った。

 今年度の主な動きは「去年、千葉県に大きな被害を与えた台風15号の時もそうですが、地元建設業者の方々に大変な強力をいただきました。災害復旧は初期動作も含めて地元建設業者の協力がないと行えません」と振り返る。そして2月に初弾として「山梨県建設業協会と合同で訓練を行いました。できましたら管内全ての建設業協会と同じような訓練を行いたいです。関東も梅雨入りして訓練は厳しくなりますが、重点的に進めたいです」と意欲を示した。

 去年の災害は広域的かつ同時多発的に発生し「通常では一つの被災県に対して、それぞれの協定建設業者にお願いして対応しますが、千葉県では地元建設業者だけでは対応できませんでした。結果として栃木県の応援を受けたのです」と説明。その事態を受けて「広域的な災害に対応できる仕組みとしての災害協定の調整を事務方で進めています。複数の都県でお互いに応援しあう関係となります。できれば早い時期に協定を結びたいです」と述べた。

 TEC-FORCEとリエゾンの人材育成については「去年の出動件数は過去最大でした。人材育成は喫緊の課題です。4月からその研修を行う予定でしたが新型コロナウイルスの影響で延期している状況です」と話す。さらに「TEC-FORCEの高度化プランとして『直轄ドローン隊』を整備します。災害発生時の初動となる状況把握に大きな役割を発揮できると考えます」と力を込めた。

【略歴】 1984年千葉工業大学土木工学科卒、84年霞ヶ浦工事事務所採用。企画部広域計画課地方計画係長、京浜河川事務所工務課長、河川部河川管理課洪水予測専門官、鬼怒川ダム統合管理事務所長などを歴任。北海道出身、58歳。座右の銘として「仕事は明るく、楽しく」。趣味はゴルフ。

<「平時からの準備が大切」と語る菱田統括防災官>

「平時からの準備が大切」と語る菱田統括防災官

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