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(独)水資源機構

水資源機構、南摩ダムが着工へ、本体工事30日に公告、工期24年度までの5カ年間

2020/06/26 日本工業経済新聞(栃木版)

 水資源機構は近く、思川開発事業南摩ダム本体建設工事(鹿沼市上南摩町)の入札契約手続きに入る。30日には総合評価落札方式の一般競争入札を公告。本体建設期間は20年度から24年度までの5カ年間に設定。政府調達協定適用対象工事。1969年4月の実施計画着手以来、半世紀を経て本体建設着工にこぎ着ける。総事業費は約1850億円を見込んでいる。

 思川は足尾山地に位置する標高1274mの地蔵岳を源流とし、南摩川、大芦川、黒川を経由しつつ県央部を南東に流下。渡良瀬遊水地に合流する幹線流路延長77・8㎞、流域面積883平方㎞の1級河川。流域市町数は6市3町あり、流域内人口は118万人。

 利根川水系渡良瀬川支川思川上流部の南摩川にダムを建設し、洪水調節(計画高水流量毎秒130立方mのうち毎秒125立方mを調節)、流水機能維持(南摩川、大芦川、黒川、思川、利根川の既得用水補給。異常渇水時の緊急水補給)、水道用水を補給する。

 南摩ダムは堤高86・5m、堤長236・5m(サーチャージ水位230・4m、常時満水位227・9m、最低水位180m)、堤体積240万立方m、総貯水容量5100万立方m(有効貯水容量5000万立方m)の表面遮水壁型ロックフィルダム。

 黒川(板荷)と大芦川(下大久保)から取水・放流し、山岳トンネルの黒川導水路(板荷~下大久保、延長3㎞)、大芦川導水路(下大久保~上南摩町、延長6㎞)を築造。ダムで洪水を調節し、導水路で両河川の水量を融通し合い効率的な水利用を実現させる。

 15年9月の関東・東北豪雨では鹿沼観測所の24時間雨量が444㎜を記録。小山市乙女は思川の計画高水位を1m以上上回り、流域内では3700世帯に避難指示が発令された。洪水調節によって利根川沿川地域の浸水被害を防ぐ。

 利根川水系では約3年に1度の周期で渇水が発生している。思川流域沿川地域は堰から取水した流水を農業用水に利用しており、渇水時には取水制限期間が設けられる。農業者は取水が困難になるほか、流量が減少した河川環境に影響が生じている。

 水道用水は毎秒最大2984立方m(栃木県0・403立方m、鹿沼市0・22立方m、小山市0・219立方m、古河市に0・586立方m、五霞町0・100平方m、埼玉県1・163立方m、北千葉広域水道企業団0・313立方m)を供給する。

 県南地域は地下水依存度が高く、地下水くみ上げによる地盤沈下や地下水の汚染が危惧される。地下水から表流水への一部転換を促進し、地下水と表流水の取水バランスを確保。近年は年間降雨量の変動幅が大きく、渇水時に果たすダムの役割は大きい。

 19年度末進捗率はダム用地(372ha)が99%、導水路用地(3・16ha)、家屋移転(80世帯)、代替地造成(31世帯)、県道改良(13・2㎞)が各100%、付け替え県道(6・4㎞)は80%、付け替え林道(24・4㎞)は20%、ダムサイト造成が31%。

 思川開発事業は当時政権の座にあった民主党が09年12月、ダム着工を凍結。この間、事業の必要性、計画内容の点検、代替案の可能性を模索。国土交通省は16年5月、事業検証で継続が妥当と判断。水機構は19年3月、24年度までの工期延長を決定した。

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