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栃木市、蔵の街再生へ官民連携組織、2月に未来ビジョンを策定

2020/10/21 日本工業経済新聞(栃木版)

 栃木市は、官民連携まちづくり組織「蔵の街とちぎプラットフォーム」(会長・横内基国士舘大准教授、18人)を設立した。中心市街地の将来像を示す未来ビジョンを策定し、別途設立する「まちづくり会社」が自立・自走型システムの中核的な役割を担う。2月上旬には未来ビジョンを取りまとめる予定。目標年次とする2030年の年間観光客数100万人を目指す。

 まちづくり会社への参画予定者、まちづくり地域団体、有識者、市、UR都市機構で構成。会員の互選により横内会長を選出。横内会長が副会長に神山裕紀市商店会連合会副会長、藤原順子クラモノ実行委員会委員の2人を指名した。役員の任期は2年。

 江戸時代は日光例幣使街道の宿場町や巴波川の舟運による物資集散地に発展。明治時代は北関東有数の商都に繁栄。見世蔵、木造店舗、土蔵といった建物が現存。市民の誇りであり、人々を集める大きな魅力。しかし歴史的町並み維持は様々な課題を抱えている。

 市中心部の両端に立地するヤマサ味噌工場跡地と旧栃木警察署跡地の2つの大規模公的不動産の利活用を当面の課題に据えた。味噌工場跡地は嘉右衛門町伝統的建造物群保存地区内の敷地面積5978平方m、旧栃木警察署跡地は室町の敷地面積5144平方m。

 味噌工場跡地は市が例幣使通り(市道11063号線)沿い「まちガイドゾーン」の改修工事を進めている。市所有の旧栃木警察署は栃木駅前の玄関口に位置し、現在は更地。新たな利活用策が決まるまでの間は観光客や買い物客に無料開放中。

 民間事業者からは2つの公的不動産の活用を好機ととらえ、これらを核に面的なまちづくりを展開。まち全体で稼ぐ環境をつくり、官民関係者による将来ビジョンの共有が提案された。市は国が今年度に創設した「官民連携まちなか再生事業」に申請し、採択された。

 基本方針は①集客エリアの形成(歴史的資源を活用し、日常的な観光やリピートしたいお気に入りの場所)②アクセスと周遊性の向上(一部に利用者が集中する駐車場の是正。ITやモビリティの普及)③歩きたくなる環境(歩行者空間の確保)づくり-の3つ。

 両跡地周辺にリピートしたくなる魅力を埋め込み、集客の核となるエリアを形成。IT活用の駐車場管理システムや主要スポットを結ぶモビリティを導入し周遊を促す。通り沿いにベンチや日影、テラス席を設置。居心地が良く歩きたくなる街なかを創出する。

 現時点での蔵の街への観光客数は年間約30万人と見劣りし、本来のポテンシャルが十分に発揮されていないと判断。巴波川沿いの蔵や歴史的建物が建ち並ぶ景観を保全・継承。大規模小売店舗の郊外進出により空洞化する街なか空き店舗の有効活用を支援する。

 JTBF旅行者調査では新型コロナウイルス感染症収束後、国内旅行を希望する人は約70%。一方では当面は旅行を控える人が約25%。旅行需要の回復時期を見通すことは困難なだけに、長期的には来街者が回復することを見込みつつ計画を立案する。

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