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長野県,(社)建設コンサルタンツ協会関東支部長野地域委員会

低入基準引上げは国の動向踏まえ/災害業務受注者への優遇措置検討/県と建コンが意見交換会

2020/10/31 長野建設新聞

 県と建設コンサルタンツ協会関東支部(野崎秀則支部長)の意見交換会が22日に長野市のホテル信濃路で開かれた。協会は若手技術者の配置を評価する総合評価落札方式の拡大や災害業務を実施した企業に対する優遇措置、低入札価格調査基準価格の引き上げなどを要望。県は調査基準価格について「国が引き上げた場合には検討する」との考えを示した。

 会合は新型コロナ感染拡大防止のためWeb会議形式で開催。会場には長野地域委員会と県の出席者が集い、野崎支部長をはじめ関東支部の役員はリモートで参加した。長野地域委員会からは中嶋孝満会長以下、役員や会員、県からは建設部の田中衛建設技監や青木謙通技術管理室長、農政、林務、環境の各部や会計局、企業局の代表などが出席した。

 冒頭、野崎支部長は、県が繰越等の柔軟な活用により納期の平準化に努めている点や、東日本台風災害の発生を受けて全県下で手持ち業務の履行期間の延長を認めるとともに、災害後の発注案件にフレックス工期を導入したことを挙げ「われわれの要望・提案に対し積極的に取り組んでいただいている」と謝意を表した。

 田中建設技監は「県では原則全ての工事をICT活用工事の対象にするとともに、昨年度は協会の協力も得て信州BIM/CIM推進協議会を立ち上げた。こうした取り組みを通じて、建設産業の生産性の向上や魅力の創出による担い手確保を図っていきたい」と述べ、協会にけん引役となることを期待した。

 意見交換では長野地域員会が入札制度や業務遂行上の課題を示し、改善策を要望・提案した。

 入札制度に関しては「モニタリングの結果、本年度4~8月の発注案件うち総合評価の採用が望ましい案件が5件あった」と指摘し、今後の同種案件で検討するよう要望。2017年度から試行している「若手技術者の配置を評価する総合評価」の拡大も求めた。

 また「フレックス工期は、趣旨からすれば災害業務の受注者に限り適用すべき」と提起。さらに「災害業務の受注者に何らかの優遇措置を付与してほしい。関東地整では災害協定や災害活動を評価する総合評価落札方式も試行されている」と提案した。

 県は若手技術者配置の総合評価について「同項目の評価を申請する割合が全体の15%程度にとどまっており、取り組みの加速を期待する状況に至っていない。ただし、担い手確保・育成は喫緊の課題であり、協会の意見も踏まえ拡大などを検討する」と回答。災害業務の受注者に対する優遇措置については「国や他県の動向も踏まえ適用を検討する」と答えた。

 低入札価格調査基準価格の引き上げについては協会が「近年、i-Con、BIM/CIM、3D、ドローンなどの新技術が業務遂行に欠かせなくなってきており、機材購入や人材教育等の経費が経営上、大きな懸念材料になっている。多くの業務を消化したくても働き方改革による残業時間の制約がある。インフラ分野のDXと働き方改革を推進するためには、必要な経費を確保して投資することが不可欠」と訴え、現行87.5%の基準価格を90%に引き上げるよう求めた。

 これに対し県は「調査基準価格は国の中央公契連モデルを参考に県独自で設定している。国が基準を引き上げた場合には、県もこれに連動し検討する」との考えを伝えた。

 19年度から建設部発注案件で実施されているウィークリースタンスについては、協会が「現地期間への周知徹底を図るとともに、他部局でも実施してほしい」と要望。県は「より良い取り組みになるよう検討する」と応じた。

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