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国土交通省関東地方整備局(建設),(社)栃木県建設業協会

関東地整と栃建協が意見交換、広域道路網への重点投資を要望、守り手マスターを提案

2020/11/07 日本工業経済新聞(栃木版)

 国土交通省関東地方整備局(土井弘次局長)と県建設業協会(谷黒克守会長)は5日、宇都宮市の県総合文化センターで公共工事の諸課題改善を目指す意見交換会を開催した。協会は「予算の確保」「生産性向上への対応」「感染症対策」の3点を質問。関東地整は①国土強靭化3カ年緊急対策後は骨太の方針通り中長期的な視点で十分な予算を確保②2023年度までに全工事へのBIM/CIM活用を原則としており、21年4月に関東技術事務所に新技術人材育成センターを設置③「新しい生活様式」に伴う経常経費や作業効率は諸経費動向調査や施工形態動向調査で検証する-と回答した。

 土井局長は「今年度の直轄事業は約5400億円、補助を含め約2兆円。国土強靭化緊急対策の効果が大きく、臨時措置後の予算確保が課題。感染症の収束が見通せず、作業効率の低下が懸念される。互いに知恵を出し合い、難局を克服したい」とあいさつ。

 谷黒会長は「防災減災対策は道半ばであり、頻発する自然災害対応への恒久的な予算化が必要。地方創生を進め、東京一極集中型から多核連携型の国づくりが求められている。国会等機能移転に備え、地方の広域道路網への重点投資をお願いしたい」と訴えた。

 協会は自由討議で①給与・休暇・希望の新3Kの実現②地域の守り手としての災害時応急措置業務の損害補償③大規模災害に備えた国の防災機能バックアップを担う県の総合防災拠点の推進-について提案。

 増渕薫副会長は「新3Kの実現には処遇改善とともに、建設業に従事する誇りを持つことが重要」と指摘。協会が「地域の守り手マスター」制度を創設し、公的機関が認定。警察、消防、自衛隊と同じ地位を築き若者の入職につなげたいと提起した。

 関東地整は建設業の担い手の確保や定着には、地域の守り手マスターは有意義な制度と受け止めている。地域の守り手を地域に浸透させ、県内に定着させるという手法は興味深い。県と意見交換をしていると聞き、県にコメントを求めたいと述べた。

 県土整備部は地域の防災活動への協力を通じ、警察、消防、自衛隊に匹敵するような立場を確立するというのは非常にハードルが高い。人材育成や建設業の社会的地位の向上には有意義な提案であることは間違いない。今後は制度について勉強したいと応えた。

 山根良信副会長は2011年から協会独自に開発した「道路河川等管理情報システム」を運用し、大型土のう製造機「クイックホッパー」を全支部に配備。「建設従事者の災害補償規定や運用があいまいなため、改善を願いたい」と申し入れた。

 関東地整は品確法の改正で発注者の責務に「労災補償に必要な保険契約の保険料の予定価格への反映」が盛り込まれた。災害時の緊急対応の充実強化に向け、全工種区分で実態に即した現場管理費を認めていると回答した。

 斎藤和実常任理事は「新しい生活様式の定着に伴い、東京圏は7年ぶりに転出が超過。本県へも移住気運が高まっている。県は国会、国の機関、民間企業の移転や代替機能の候補地に名乗りを上げている。国土の均衡ある発展の絶好の機会」と述べ、国の所見を問うた。

 関東地整は今後の国土の在り方を問いかける大きなテーマと認識した。社会資本整備重点計画の見直し作業に着手し、今年度から来年度にかけてインフラ整備の方向性を詰めていく。コロナ渦や国土強靭化の観点から、国の置かれている状況を多方面から分析したいと語った。

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